2013/06/01-

時間の無駄だから読まないほうがいいよ。

しがつのまとめ

 ころなだったのでそこそこの冊数をこなすことができた。いや、冗談ではなくほんとうに。四月の半ば頃に妹が発症、翌日に弟にも症状が出た。保健所からの指示で買い物は三日に一度に限り、外出も自粛。発症から十日、症状が治まってからも最低三日は外出するな、とのことだったので二週間ほど家からでなかったことになる。

 もともと自ら外出するような性格ではないのだけれど、流石に一週間以上ともなると圧迫を感じる。雨が降っているわけでも台風の最中でもないのに身体が膨らんだような気分、症状がひたすら続いた。精神的にも肉体的にもよろしくない。待機期間が終わったあと、あれほど外出できることをありがたく思ったのははじめてだ。

 そんなわけで先月は終末特集を組んだ。ひたすら核が落ちたり地球が裂けたり廃墟を巡るような物語。渚にてやポストマンといった有名どころは押さえたので、今回は北斗の拳人類は衰退しましたといった、ちょっと隅をつつくようなタイトルを選択。

 どちらもストレートな終末ものではないがジャンルを越境する楽しみがある。特に人類衰退は終わった世界から人類史を振り返る、という観点を採用していて、シマックの『都市』や『大地は永遠に』のような趣がある。最近だとジャレッドダイヤモンドの『銃・病原菌・鉄』だろうか。人類史を振り返りつつ、終末後の人々が過去の文化に触れたらどのような反応をするだろうか?そんな妄想の詰まった楽しい読書だった。

 他にも物体Xやゼイリブといったカーペンターの映画も鑑賞。物体Xはパンデミック下の混乱を凝縮したような作品だけに、臨場感は他では味わう事のできないものだった。誰が菌を持っているのか、一週間以内に移されるのではないか……そういった疑問が常に付きまとう。PCR検査の結果を待っている間の緊張感が作中の血液検査に通じることなどもうないだろう。

 ……振り返ってみるとけっこう楽しかったな。あまりに暇なときは復活の日をぺらぺらめくってたこともあった。(荒廃した都市を東京湾から眺める場面が好き)。精神的にも肉体的にもただ疲れるのでもう一度経験したいとは思わないけれど。

 そんな感じ。手洗いうがいはしましょう。


www.youtube.com

2022年4月の読書メーター
読んだ本の数:23冊
読んだページ数:7675ページ
ナイス数:148ナイス

https://bookmeter.com/users/159174/summary/monthly/2022/4
北斗の拳 完全版 (1) (BIG COMICS SPECIAL)
199X年
世界は
核の炎に
包まれた!!
(キノコ雲)

海は
枯れ
地は
裂け

あらゆる
生命体が
絶滅したかのように
みえた
....…..............

だが...

人類は
死滅して
いなかった!!
(バイクに跨り斧を構えた筋骨隆々のモヒカン集団)

これを超える導入を未だ読んだことがない。画力、コマ割り、台詞回し、改行、すべてにおいて完璧。
読了日:04月01日 著者:武論尊
https://bookmeter.com/books/486311

北斗の拳 完全版 (2) (BIG COMICS SPECIAL)
悪人を強請って食料を調達するところまでは「モヒカン」だけど、そこで女装しているのがレイらしい。(らしい?)。北斗はこの手のフックのし込みがほんとうにうまいな。
読了日:04月01日 著者:武論尊
https://bookmeter.com/books/486312

北斗の拳 完全版 (3) (BIG COMICS SPECIAL)
「おい、おまえ!おれの名をいってみろ!!」「そうか!!おまえおれの胸の傷を見ても誰かわからねぇのか?もう一度だけチャンスをやろう!おれの名をいってみろ!!」「ほ~~~、それではおれの名をいってみろ!!」
名前を言ってみろ、ただそれだけでこのバリエーション。「今は悪魔がほほえむ時代なんだ!!」もいい。シンを扇動した、という物語上の仕掛けも重要ではあるけれど、関係性以上に演出がジャギを印象づけている。すべてが名言。
読了日:04月01日 著者:武論尊
https://bookmeter.com/books/486313

北斗の拳 完全版 (4) (BIG COMICS SPECIAL)
「あ~~~聞こえんなぁ!!」声も態度も身体もデカいウイグル獄長。ライガフウガのコンビも金剛力士像的な筋肉感がある。四巻の時点でモヒカン、レイ、ジャギの主要人物が登場したが、どれも印象的で優劣をつけることができない。「強さ」ではなく画力と台詞で魅せているのはさすがだ。ただラオウよ、勝負の前に死兆星チェックはやめろ?
読了日:04月01日 著者:武論尊
https://bookmeter.com/books/486314

北斗の拳 完全版 (5) (BIG COMICS SPECIAL)
銀貨ではなく拳を振るうタイプの妖星ユダ。死に際までジェンダーを越えた怪しさが漂う人だけに原哲夫の画力が際立つ。特に冒頭の紅を差してから見開きで鏡を見るまでの画は強烈だ。目立つ台詞はないけど、画で人を魅了しているという意味では珍しいキャラクターだと思う。
読了日:04月03日 著者:武論尊
https://bookmeter.com/books/486315

北斗の拳 完全版 (6) (BIG COMICS SPECIAL)
「退かぬ 媚びぬ 省みぬ」天翔十字鳳前後からこれまでで最も強烈な画がひたすら続く。サウザーの勢いのある性格を推すように、陰影も二段から三段とより濃く、塗りつぶすようになっていた。死の間際にそれまでキアスクーロ状態だったサウザーの顔から影が消える演出といい、情報量のコントロールがうまい。デッサン自体もラオウが復帰したあたりから写実的になっているし、何かあったのだろうか。
読了日:04月03日 著者:武論尊
https://bookmeter.com/books/486316

北斗の拳 完全版 (7) (ビッグコミックススペシャル)
リュウガ、ジュウザ、フウガ、インターミッション。五車星の考え方は面白いけどラオウの前座にしては遠回りすぎる。
読了日:04月03日 著者:武論尊,原 哲夫
https://bookmeter.com/books/486317

北斗の拳 完全版 (8) (BIG COMICS SPECIAL)
天命と女にすがっていたラオウがユリアを手にかけることで共苦し(隣人)愛に目覚めるという皮肉。彼はどちらかといえば悪人なのだけれど、自分の身を切り裂いても勝とうとする姿勢だけは祝福すべきなのかもしれない。あと最後の最後に母殺しに着地するとは思わなかった。西洋と東洋の中道を行くような不思議な作品だ。このあと賛否両論の第二部が続く...のだけれど、しばらくは読まないかな。
読了日:04月03日 著者:武論尊
https://bookmeter.com/books/486318

■天空の劫火〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)
SF、政治劇というより「ポストアポカリプス」。邦題の劫火と原題のThe Forge of Godがそのままの意味で用いられている。大統領が安全保障や研究者の助言そっちのけで黙示録を語る、という情景はいまいち現実感が欠けるように思うのだけれど、米国には黙示録3174年みたいな作品もあるわけで、終末をキリスト教の世界観で語るというのはスタンダードなのだろう。ヨハネを諳んじて邁進する大統領が兎に角強烈な作品だった。衛星を転用したり食ってしまう兵器(プラネットイーター!)も味がある
読了日:04月13日 著者:グレッグ ベア
https://bookmeter.com/books/426569

■天空の劫火〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)
「海は枯れ、地は裂け、 あらゆる生命体が絶滅」する下巻。大陸が裂けるとか地球が煮えたぎるといった言葉がここまで大真面目に書かれている作品も珍しい。平行して上位存在による選民と救出が行われるから黙示録じみた雰囲気がある。(さすがに移民船を「箱舟」と表現するのはあからさまなような気もするが)残された人々が地球の事をさっさと忘れて環境に馴染むあたりもラザロの国という感じで、煩悩とか執着に馴染んだ我々とは最期まで世界観が違った。日本ではまず書かれないタイプの作品だと思う。
読了日:04月14日 著者:グレッグ ベア
https://bookmeter.com/books/426570

■星を継ぐもの (創元SF文庫) (創元推理文庫 663ー1)
しばらくこの界隈から離れていたせいか、自説を喚き散らす科学者とかパーティーで喚き散らす科学者とか、その辺のSF小説らしい大雑把な感じが引っかかって素直に楽しめなかった。良くも悪くも後期ロマン派だから、ガーンズバックあたりと平行して読めばいいのかもしれない。こあと推論を披露する前に証拠を分析して”帰納”させて欲しいんだよな。事実から事実以上のものを引き出すのは演繹ではなかろか。チャーリーとかその周辺の証拠を発掘するあたりはよかった。
読了日:04月15日 著者:ジェイムズ P.ホーガン
https://bookmeter.com/books/574954

山椒魚戦争 (岩波文庫)
ロボットの、チャペックの作品ということであまり期待をせずに読みはじめたがかなり面白かった。インスマウス風に怪奇的にはじまり、ファーストコンタクトを経て人間による使役、代理戦争、総力戦に至る。青背にはいっていないのが不思議なくらい真っ当なSFだ。中盤の労働運動の下りはプロレタリア文学っぽくもあるが、取り扱っている資材の内訳や高等教育の内容が具体的で読ませてくれる。人語を獲得するまでの過程や語彙の偏りまで網羅的に描写しており、単なる政治文学に留まらない凄みがあった。
読了日:04月18日 著者:カレル チャペック
https://bookmeter.com/books/490417

動物農場: おとぎばなし (岩波文庫)
言ってしまえば嘘をつくようには見えない人が堂々と嘘をついて他人からものを奪う、という筋なのだけれど、これを国家がやると皆がコロッと騙されてしまう。手管自体はコミュニズムだけではなくファシズム、時期によっては英米でさえもあてはまる。オーウェルが西側の人だからこの本は共産主義の分析本として読まれてはいるけれど、実際の射程はもっと広い。例の本1984よりもガジェットが少なく策略もストレートだが、その分読みやすいし、ディストピア入門に良い本だとも思う。
読了日:04月19日 著者:ジョージ オーウェル
https://bookmeter.com/books/573334

人類は衰退しました 1 (ガガガ文庫)
何か既視感があるなーと思いつつ読み終えたが、そうだこれ、シマックの都市だ。文明の後継者の視点から回想(再現)される人類史、一方文明の主人となったことで出自を忘れてしまう新人類、交代によってオーパーツ化した技術(製菓)。楽しい度で増減する妖精は立派なサイバーパンクだし、早川JAあたりにラインナップされていてもおかしくない。流し読めばライトノベル、深く掘ればきちんとSFとしても読める巧妙な作品だ。この頃のガガガはエロゲライターを呼び込んだりして尖っていたな。いい時代だった。
読了日:04月19日 著者:田中 ロミオ
https://bookmeter.com/books/4339726

人類は衰退しました 2 (ガガガ文庫)
前後二部構成で前半はスプーン叔母さんがアルジャーノンしてガンバを旅して後半は野生児がループして人格を手に入れようとする。というか実質クロスチャンネル。他者との接触なしで自我を手に入れる術はあるのか、というのはADV業界で彼が書き続けてきたテーマではあるけれど、人退に挿入するにはちょっとぼんやりしすぎている気がする。個人的にその手の話が好きだから満足はできたのだけれど。
読了日:04月20日 著者:田中 ロミオ
https://bookmeter.com/books/4339725

人類は衰退しました 3 (ガガガ文庫)
きちんと人類が衰退している。心地よい破滅に入れるにしても前巻まではあまあまな作品だったが、ここにきてきちんとポスアカらしい作風になってきた。遺棄された都市とそこで迷子になって飢えと乾きに悶える探検隊なんかは人類文化のオーパーツ化を対比的に表していて面白い。その都市が形状記憶合金の増改築を加えて出来た不良品ってのも浪漫があった。電磁パルスによる情報科学の喪失といい、終末の要因ひとつとっても癖がある。いいなぁ。
読了日:04月21日 著者:田中 ロミオ
https://bookmeter.com/books/4532462

人類は衰退しました 4 (ガガガ文庫)
技術的特異点を越えて共食いしながら食料を生産する鶏(肉)とファーミングシミュレーター。カカオの生産失敗と代用商品として登場する飴玉、汚名をそそぐために生産した植物の大量生産の果てに連作障害を起こして滅びているのが近代文明!って感じ。これで交易ができたなら三角貿易が成立したりしたのかな。焼畑焼畑。主筋の単純さに比べて設定が凝っているのは相変わらず。ただ、説明もせずさらっと流すから頁を捲っては戻るを繰返す羽目になった。えぐいえぐい。
読了日:04月22日 著者:田中 ロミオ
https://bookmeter.com/books/4532561

人類は衰退しました 5 (ガガガ文庫)
原始、未来、農業、ときて今度はゲーム文化。インベーダー、テトリスぷよぷよ、マリ……と挙げだせばキリがないが、そういった様々なゲームのシステムやグラフィックレベルをつかったリアリティラインギャグが楽しい。少しだけ魔界村にも入ったけど、対象年齢どうなってんだろ……趣味でやね。前半はロミオ作品ではお馴染みディスコミュニケーションカーストなやつ。勝気なBLを嗜む銀髪少女とわたしの百合。
読了日:04月23日 著者:田中 ロミオ
https://bookmeter.com/books/4652367

人類は衰退しました 6 (ガガガ文庫)
空を飛ぶこと、同人誌を回し読むこと、デフォルトされた社会でこれら二つが再発見されたなら、我々はこれをどう解釈するのか、というお話。前者は鳥人間コンテストだし後者はコミケなのだけれど、そこには安全性やゾーニングのような枷はない。飛びたい、読みたい読ませたい、という意欲のみ。人々が欲望に忠実な姿は現代以前の(ライヒェルトがいたような)危険な社会を思い出させる。ただ自力で達成するのではなく後継人類の助けを借りて、というのはご愛嬌か。(馬力増強薬というのもギャグっぽい)それにしてもYかわいいな。
読了日:04月23日 著者:田中 ロミオ
https://bookmeter.com/books/4652357

人類は衰退しました 7 (ガガガ文庫)
そもそもネグレクトを解決しよう、という考えが衰退した人類に似つかわしくないーだから自立自律させましょう。長年家族を書いてきた作家だけあって、諦観、割り切りがすごい。アメリカ型の終末SF(大地は永遠にとか)では親子でキャンプ張って狩りにでかけたりするけど、あれも物質面で余裕があるから成立するようなもので限界がきた世界で家族を想像しようとすれば、こうなるのだろう。後半はPKディック。情緒面を強調するあたりがいかにもラノベだが、こういう風情のあるミスリードもたまにはいいかな
読了日:04月24日 著者:田中 ロミオ
https://bookmeter.com/books/5148989

人類は衰退しました (8) (ガガガ文庫)
拡張現実で町おこしという凡庸な主題とガジェットを主題にしつつキャラクター小説の書き方的な消費論に目配せ。興味がないこともあって拡張現実と聖地化の抱き合わせやカップリング消費はあまりのれなかったのだけれど、トリガーに胎児を持ってきたいるのは面白かった。出産は「泣く」ための道具になりがちだが、工夫次第ではメタギリギリを突くための武器にもなる。ちょっとドグラマグラっぽい。
読了日:04月24日 著者:田中 ロミオ
https://bookmeter.com/books/6079397

人類は衰退しました (9) (ガガガ文庫)
創発の変化球として読めばいいんだろうか。エミュレーションを繰返してきた理由にはなるけど、なんか、なぁ……頭打ちになった文明を進化させる手段にしては反則っぽい。楽園の泉とか胎児の夢風の振り返りはよかった。
読了日:04月25日 著者:田中 ロミオ
https://bookmeter.com/books/8082402

人類は衰退しました 平常運転 (ガガガ文庫)
妖精の本編、人間の外伝。どれもようわからん技術を見つけるなり継承した人類が果物の品種改良とか信仰の火種に転用する類のエピソードで、SFというより宗教とか社会科学の色が濃い。いや、衰退したからにはそうなるのが自然ではあるけれど、妖精譚と比べるとあまりノレなかった。外伝らしく一冊で十分な内容だと思う。
読了日:04月27日 著者:田中 ロミオ
https://bookmeter.com/books/8968852


読書メーター
https://bookmeter.com/