2013/06/01-

時間の無駄だから読まないほうがいいよ。

ごがつのまとめ

 サイバーパンクというゲームで遊んだのでサイバーでパンクな本ばかりを読んだ。

 学生時代から苦手な分野だったけど、相変わらず難しい。それもサイバーではなく「パンク」が。元もと既存の物語形式や作家の勢力争いからの離脱を目的に醸成されたジャンルだからしょうがないのだけれど、文体も形式もふわふわしていて読みづらい。バローズやハクスリーのような離人的な視点で世界を巡る羽目になる。僕はサイバネティックスを読みたいだけなのに……と言いたいところではあるけど、それでは単にガジェット好きの人になってしまうので、そこは耐えた。とりあえず長年の課題だったニューロマンサーをクリアしたので満足。

 まぁあとギブスンの好きなニホンモドキ文学を三冊。中でもユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパンは良かった。封建制でガチガチに体制を固めた日帝が世界中で蛮行を働く……というとナショナルな感情が揺らいでしまうが、そこはフィクションの力で何とかした。思い入れのあるモチーフでも創作だと割り切ってしまえば楽しい。遅れた価値観を持った最強の軍隊、最先端の技術、それを駆使した全体主義……というくらーい設定を盛り込んだ作品が面白くないわけがない。

 あと、世界観がこれなんだよね。


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 そんな感じ。いまは記紀神話をモチーフにした。朝霧の巫女を読み直している。日本ver.2ばかり当たってるな。

 

2022年5月の読書メーター
読んだ本の数:17冊
読んだページ数:6169ページ
ナイス数:142ナイス

https://bookmeter.com/users/159174/summary/monthly/2022/5
■我もまたアルカディアにあり (ハヤカワ文庫JA)
出演者全員がブレーキの踏み方をわかってないんだけど、それがニューロマンサーのノリと勢いと人体改造をままに引きついている。肉体を限界まで酷使したい→手足脊髄全部取っ払って機械に置き換えよう、将来は作家になりたい→下半身を切除して残りのりリソースを全て上半身に、働きたくない→軟禁して生活保護で暮らせ、子孫も行動制限な、外に出たい→放射能の嵐のなかで窒息しろ。普通は権力による資源の収奪や行動の制限を悪役に見立てるものだけれど、そういうものが一切ない。悪癖に見えるようなものまでぜーんぶ自己責任の範疇でやってしまう
読了日:05月01日 著者:江波光則
https://bookmeter.com/books/9761935

スノウ・クラッシュ〔新版〕 上 (ハヤカワ文庫 SF ス 12-11)
仮想現実黎明期らしい発想や言葉を伝染病に見立てた文明論は面白い、のだけれどそれぞれのアイデアにつながりがない。ストーリーとの関わりも希薄で、その場その場で思いついたことをひたすら聞かされているような気分になった。キャラクターは個性的……だが、これもインテリタイプではなく物語のなかでひたすら浮いている。どのページも羅列的で小説というよりメタバースの概説本という印象を受けた。
読了日:05月01日 著者:ニール・スティーヴンスン
https://bookmeter.com/books/19034425

スノウ・クラッシュ〔新版〕 下 (ハヤカワ文庫SF)
文体がすごい。人種や宗教への偏見がにじみ出ている。本人はギブスン風の(重力井戸を昇って悪徳都市を出た、みたいな)文章にしたいんだろうけど、捻りのない隠喩でぎゃーぎゃー喚くだけだから品がない。ちょっとした世界史の知識に派手な理屈を乗っけてふんぞり返るあたりはジャレッドダイヤモンドのなんちゃって人類学に似ている。ワイアードが好きな層、先進的でさえあれば精度は問わない人間には受けるだろうけど、それでいいのか?
読了日:05月02日 著者:ニール・スティーヴンスン
https://bookmeter.com/books/19034426

■ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
なるほどイナゴ(USA)はゲバラのゲリラ戦術のような教本だから隠されたのか。ディックならこんな結論を出さないだろうけど、高い城の男を基にここまでの間諜小説に辿りつくのはなかなかのことだろう。創氏改名や防疫給水部隊をベースにした設定は元ネタになった国の人間としては考えてしまうところもあるが、ここまで極端に走れば娯楽として一級。人体改造の限りを尽くし、余生を肉人形に囲まれて過ごす退役軍人や(レジスタンスが開発したことになってるけど)軍隊蟻も敵(創作日帝)に相応しい。とてもよく出来たディックの、日本文化の外延的
読了日:05月07日 著者:ピーター トライアス
https://bookmeter.com/books/11182001

■メカ・サムライ・エンパイア (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
前作はディックで今回はハインライン、宇宙の戦士、あるいは終わりなき戦い。運動も勉強もできないギークが戦士になる、というのが今風で米国の筋肉質な戦争小説との違いでもある。ゲームを軸に戦術や訓練も組まれているから軍隊生活も殺伐としていない。(筋トレも訓練メニューにはいっているからその辺の苦労話もあるのだけれど)。ロボの殴り合いも派手で面白い。ただ命名規則サブカル風で日帝らしくないのが残念。当て字でもいいから漢字表記にしてほしかった。十二使途もなぁ……作品の情報量からし古事記くらいは読んでると思うんだが…。
読了日:05月07日 著者:ピーター トライアス
https://bookmeter.com/books/12733318

■サイバー・ショーグン・レボリューション (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
日帝IF、ロボビルドゥングロマンときて最期はロボアニメ。作風を変えながら三部作を形成する、という試みは成功しているから作家主義的には満足した。ただ、ジャパンとサムライの西欧文学のスタイルが好きだったのでこの巻だけはあまり評価できない。トライアス自身は押井や小島が好きらしいけど、この作風は富野だと思う。ナチ撤退後の廃墟に残った人体実験の痕跡(肉片)や遺伝子改造熊のコロシアムは如何にもステロタイプで尖っていたのだが
読了日:05月09日 著者:ピーター トライアス
https://bookmeter.com/books/16357980

サイバーパンクアメリカ (KEISO BOOKS)
80年代末に書かれたサイバーパンク総括、なのだけれどスターリングはヒッピー文化の関係を匂わせるばかりで定義などそ知らぬ顔だし、ギブスンはサイバーパンク作家と呼ぶなと断言しているからこのジャンルが”何”なのかは最期までわからない。そもそもエリスンやネヴィラ賞の審査員、それを取り巻くあらゆるSF環境への対抗文化として生まれたジャンルだから”何か”である必要はないのだろう。とにかく皆がレッテル張りに敏感で他人との違いを協調している。
読了日:05月11日 著者:巽 孝之
https://bookmeter.com/books/34627

ウィリアム・ギブスン (現代作家ガイド)
ギブスンはアメリカ南部の虚空に生まれて香港的千葉市的空間に至ったみたいなことが書いてあって、彼がやたらと日本を讃えるのはそういうことか、と腑に落ちた。向こうから見たらこの国はサイバネティックスとダーティリアリズムが混ざった場所(混成主体)に見えるやね……ブレードランナーオリエンタリズム攻殻の香港的空間の原型がわかってよかった。まぁデュシャンとか赤瀬川の名前も出てくるから源泉はジャンクアートなんだろうけど、これをSFに持ち込んだ功績は大きい。
読了日:05月11日 著者:巽 孝之,新島 進,ラリイ マキャフリイ,浅倉 久志,ひろき 真冬,カール・タロー グリーンフェルド,ピーター シュウェンジャー,白石 朗
https://bookmeter.com/books/11037

ニューロマンサー (ハヤカワ文庫SF)
サイバーパンクなのにパンクよりもピュア寄りでびっくりした。エリスンら古典を説き伏せるような論理に欠けている。説明がない、と読者は怒るだろうけれど語ってしまえばいずれ(クラークは既に、アシモフはもうすぐ追いつかれてしまう)時代的な制約に掬われてしまう。そういう意味ではギブスン自身も度々口にしているバロウズの影響は濃厚だし、その戦術は成功している。マトリックスだの攻殻だのと元ネタ(ガジェット)を見つけることができても、文体が我々を魅了しかつ翻弄し続けているのはその証左だろう。
読了日:05月13日 著者:
https://bookmeter.com/books/504754

ファイト・クラブ〔新版〕 (ハヤカワ文庫NV)
久々に読んだらドストエフスキー流の私小説で色々と考えてしまった。病人への共感を拒絶し死を超克するためにファイトクラブを立ち上げ物質文明に反旗を翻す……ところまではいかにもヤッピーらしい考え方で、流儀も21世紀だけど着地点にいるマーラはソーニャで19世紀だよなぁ……堕ちているからこそ”ぼく”を受け入れてくれるわけで、結末はそこでいいのか?と思ってしまった。もちろん物質文明への反抗も金貸しのアリョーナ、ラスコーリニコフの殺意はファイトクラブへと通じている。
読了日:05月15日 著者:チャック・パラニューク
https://bookmeter.com/books/9689452

■サバイバー〔新版〕 (ハヤカワ文庫NV)
ファイトクラブからタイラーとマーラをそぎ落として鍛えた悪夢みたいな作品。カルトに育てられマナーを教わり、悲劇の主人公として流れ着いたカルトで祭り上げられたかと思えばエージェントの操り人形に……ハイジャックでさえ女の占いに振り回された結果で、最期まで自分で何かを成し遂げることはない。自分で何かを決定する、自己決定、それらはすべて流されてしまう。
読了日:05月17日 著者:チャック・パラニューク
https://bookmeter.com/books/19034532

ストーンコールド 魔術師スカンクシリーズ 1 (星海社FICTIONS)
表紙はエレファントなのに中身はクリスマスキャロル。スクルージが堕ちる先は地獄でも家族でもなく、女と血の池地獄。ただ、最期まで回心はしないし金銭感覚は維持しているからその辺はドストエフスキーっぽい。(罪と罰風の)結末からして共苦の必要性を訴えている、ようにも読めるけど杓子定規で世界を測る癖は抜けていないしコロンバインは起こしてしまっているわけで、その辺の歪みをそぎ落として読むよりも、他者と交わることのできなかった異邦人として読んだ方が良い。割り切り方からしラスコーリニコフというよりムルソーっぽいんだよね
読了日:05月19日 著者:江波 光則
https://bookmeter.com/books/6275909

スピットファイア 魔術師スカンクシリーズ 2 (星海社FICTIONS)
読了日:05月24日 著者:江波 光則
https://bookmeter.com/books/6721149

■スーサイドクラッチ 魔術師スカンクシリーズ 3 (星海社FICTIONS)
読了日:05月24日 著者:江波 光則
https://bookmeter.com/books/6883934

ファイト・クラブ
僕の嘆きもタイラーのバイタリティも90年代の安定した環境があったからこそあり得たんだろうな……今となってはただただ羨ましい。もう物質文明への逆張り生老病死からの隔離を嘆くなんてこともできない世の中になってしまった。たぶん、今を生きる人にはブランドへの嫌悪と資本主義への怒りが両立することも、理解できない。(これがDQN小説に見えるのはそういうことなんだよね)
読了日:05月25日 著者:チャック パラニューク
https://bookmeter.com/books/521684

時計じかけのオレンジ 完全版 (ハヤカワepi文庫 ハ 1-1)
モラリストの神経逆なで全部盛りみたいな小説でかなり面白い。バッハやベートーベンといった古典派を嗜む若者が人を殴り人を殺し、更正したかと思えばまた音楽によって回心してしまう。それだけではない。全体主義的な”転向”を支える道具としてもベートーベンは活躍してしまう。情念と理性の統合である音楽が規範を逸脱するような事態に人間はどう対処すればいいのか。音楽に効果がないなら、もしかしたら文学にも、いやもしかしたら人間には良識などというものは存在しないのかもしれない。アレックスの人生は知識人の不安を表しているように見え
読了日:05月25日 著者:アントニイ・バージェス
https://bookmeter.com/books/573801

アントニイ・バージェス選集2(時計じかけのオレンジ
読了日:05月28日 著者:アントニイ・バージェス
https://bookmeter.com/books/7822874


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