2013/06/01-

時間の無駄だから読まないほうがいいよ。

7月の読書

 先月は体調どん底、精神ボロボロ、だったのだけれどけっこう読んだ。臥せっているしかできないと本を読むくらいしかできないので自然と冊数は増える。ただ、戦争や殺人といった内容が重いものは身体に影響を与えることもあって手にとっていない。何でだろうね。無意識下でストレスになっているんだろうか。HBOのチェルノブイリを観終えたところだから本当はチェルノブイリの祈りとセカンドハンドの時代に目を通しておきたかったのだけれど、ただただ無念だ。

 あとリヴァイアサンと市民政府論を続けて読んだ。流石は古典新訳文庫。かなり読みやすい。この二つの大著を一挙に読み飛ばすなんてことは岩波文庫や世界の名著ではできなかった。(精読しないなら読むな、なんてことを言われるかもしれないけど、そういう楽しみ方もたまにはありだと思う。思想史の概略で読んだ気になるよりはまともだと思いたい。

2021年7月の読書メーター
読んだ本の数:17冊
読んだページ数:5490ページ
ナイス数:75ナイス

https://bookmeter.com/users/159174/summary/monthly
マクルーハン理論 (平凡社ライブラリー)
活版印刷から情報が多人数で共有される時代がはじまって、新聞の誕生によって閲覧の同時性が限界を向かえて……これからはテレビの時代だ!となるあたりのメディア論の夜明けを感じさせる。眩しい、あまりにも眩しい。マスコミの権威は失墜し、SNSでは不確かな情報が蠢き人々の不信を膨らませている現在ことを考えると、希望に燃える姿が羨ましくもある。発想自体は面白くて、テレビの節操のなさ(線=構成の欠如)を禅的で西洋的な理性を越えるものとして歓迎してたり媒体の進化が如何に情報の伝達速度を支えていた
読了日:07月02日 著者:マーシャル マクルーハン,エドマンド カーペンター
https://bookmeter.com/books/104632

ニーチェ・セレクション (平凡社ライブラリー)
厭世主義や永劫回帰の箇所はよく出来ていて、世間の価値や他者への配慮のあり方を根底から揺るがす力がある。読み継がれる理由もわかる……のだが、自己中心や主客を超越した言い回しが異様に多い。後にも先にもこんな哲学はないのだけれど、世間的にはこれが哲学のイメージなんだろうなぁ……と多少複雑な心境で読み終えた。あと力への意思からの引用が大体わかりにくい。抜粋だからなのかもしれないが、素直に道徳の系譜といった完成した本を読んだ方がわかりやすいと思う。
読了日:07月05日 著者:フリードリヒ・ヴィルヘルム ニーチェ
https://bookmeter.com/books/22152

モンテ・クリスト伯 上 (岩波少年文庫 503)
復讐譚として翻案されがちな作品だが、時代設定からフランスらしさが凝縮されている。ワーテルロー前夜、エルバ島へ密書を運ぶ船長、その罪をなすりつけて逮捕させる友人、ボナパルト党の父を庇って冤罪を見逃してしまう検事。百日天下直前というタイミングといい、船長の突然死といい、どれだけ運が悪いんだ、とも思うが、こういった世界史的な大状況を巧みに取り込む手腕はさすがデュマ。ダンテスが手にした財宝がかのチェーザレボルジアの遺産というのも気が利いている。ユグノー戦争を舞台にしたダルタニャンよりもスリルがあってページを捲る手
読了日:07月06日 著者:アレクサンドル・デュマ
https://bookmeter.com/books/410852

モンテ・クリスト伯 中 (岩波少年文庫 (504))
序盤の勢いを失うどころか、どんどんと複雑かつ重厚になっていく。かつての住処でヴィルホールを襲う棄児のデジャブ、罠にはめられ資産を削られるダングラール、着々と計画を進める中でモンテクリスト伯を襲うメルセデスの視線……怨念の中にふと思い出したかのように現れる女の直感が物語りに華を添えている。彼らに背を向け、独自に愛を育むヴァランチーヌとマクシリアンが帰って親世代の闘争によって結びつけるラストもにくい。(ノワルチエ宛の密書こそがダンテスにとっては致命的な一打だったろうに)
読了日:07月07日 著者:アレクサンドル・デュマ
https://bookmeter.com/books/410853

モンテ・クリスト伯 下 (岩波少年文庫 (505))
あらゆる出来事があるべき場所に嵌っていく。カドルスは死に、殺した男は検事の息子として裁かれ、その検事ヴィルホールは息子と妻の謀殺を咎めた末に発狂。彼の娘は子爵モルセールの代わりにモレルと結ばれ、一方の子爵は父の過去を暴き、弾劾し、自殺に追い込んでしまう。パズルのようだがその精密さ、規模の大きさ、そういった形容がすべてモンテクリスト伯の怒りの大きさを表しているようだ。
読了日:07月08日 著者:アレクサンドル・デュマ
https://bookmeter.com/books/410854

■自由論 (光文社古典新訳文庫)
当たり前のことを当たり前に、しかし着実に積み重ねることで自由は如何に実現するかを示す。人の話を聞け、変な意見でも益になるかもしれない。自分の主張に執着するな、変な反対論でも益になるかもしれない。そして何より互いに領域を侵犯するな。簡素なので何をわかりきったことをーなどと思ってしまうが、原理原則というのはそういうもので、見えているものを組み立てることで全体像を表すものだろう。まだ危害原理という言葉もなかった頃に私的領域や社会にとっての個性の有用性を原理から説明する様はただただ圧倒的。
読了日:07月10日 著者:ミル
https://bookmeter.com/books/105185

リヴァイアサン1 (古典新訳文庫)
確かに人間と権力欲は切り離せない、猜疑心に囚われた人間は容易に武器を手に取る、というようなことを書いてはいるけれど、一度自然状態を脱すれば自分勝手に振舞うな(自然権を行使するな)、平等な対応を心がけ、仲裁者を信頼せよ等々と割と常識的なことが書かれていて腰砕けになった。主権論に入っていないので早合点かもしれないが、この時点ではロックも自然権に対して似たような見方をしているし、ホッブズが(教科書的な)強権の人、「万人の万人に対する闘争」だけの人ではないのは意外だった。
読了日:07月18日 著者:ホッブズ
https://bookmeter.com/books/9043721

リヴァイアサン2 (光文社古典新訳文庫)
前巻に引き続いて教科書的なイメージから剥離している一冊。主権者は公民法に従う必要はない、権力を疑う言説は封殺すべき等々の記述はいまから見れば全体主義を思わせる。が、そういった強権論の背後には常に内戦、無秩序への恐れが感じられる。主権者の継承権を維持すること、逆に民衆による統治形態の変更を否定するのも、クロムウェルのような「人」による自然法の行使を否定するため。恐怖で統治することを認めながらも主権者に権力の起源を説明するよう求めてもいるあたり、統治の先に平和を希求していたことが
読了日:07月20日 著者:トマス ホッブズ
https://bookmeter.com/books/12666087

■市民政府論 (光文社古典新訳文庫)
ホッブズに比べると近代的で、それ故かずいぶんと読みやすい。立法権と執行権の分離と平衡化、それらによる所有権の保全、それが守られなかった場合の主権者の追放……戦争が起こっても、その賠償は加担したものに限定しているしリヴァイアサンより随分と人間的だ。自然権を聖書から導き出しているあたりはちょっと「古い」が、その分を体制のデザインで補っているのも面白い。人間のコミュニケーションを当てにしている部分は賛否あるだろうが、それを含めて印象的な一冊。
読了日:07月20日 著者:ジョン ロック
https://bookmeter.com/books/4045906

フランス革命―歴史における劇薬 (岩波ジュニア新書)
フランス革命の通史的な解説ではなく、ブルジョア革命とは何ぞ、という本。貴族、ブルジョア、民衆の相関関係の中で革命が何を起こし、また何を破壊したのかを所有権や生存権、デモクラシーといった概念を用いながら解説してくれる。国民議会と国民公会の違いって何?、ジロンドとジャコバンの関係がわからない、という人にぴったり。岩波ジュニア新書ということだけあって公民の教科書通りに権利概念や語句を使ってくれるので非常に読みやすい。新しい発見はなかったが、あまりにもわかりやすいから高校生の時に読んでおけばよかったーってなった。
読了日:07月21日 著者:遅塚 忠躬
https://bookmeter.com/books/522719

ロシア革命 (「知の再発見」双書)
ぐっだぐだ。二月革命が下からの突き上げではじまったのはいいけど、それを終らせるための内紛が延々と続く。チェレノフ、ケレンスキートロツキーレーニンでさえも十月革命の直前までは脇役。二月革命の勢いを党大会に持ち込めなかったのか、とも思うがそれはそれでフランスのようなブルジョア革命に留まってしまうらだろうし、歴史というのは難しい。知の再発見らしく視覚史料が豊富で、党大会で群集がわちゃわちゃしていたり、プラカードやくわをもってデモ隊が進む様は熱気に満ちている。このクオリティでフランス革命をつくってもらえないだ
読了日:07月22日 著者:ニコラ ヴェルト
https://bookmeter.com/books/14946

レ・ミゼラブル 上 (岩波少年文庫)
冤罪と正義、犯罪と良心、法律を一旦地に下ろして人間の心を対応させるところがビゼーというかフランスらしい。法を絶対視しながらも誤認逮捕してしまうジャベールと冤罪を許すことができずに自首するマドレーヌ、空腹に耐えかねてパンを盗んだ男と銀食器の盗難に目をつぶる司教。革命後の仏国が舞台の作品ではあるけれど、作品にはその精神が息づいている。
読了日:07月23日 著者:ヴィクトル ユーゴー
https://bookmeter.com/books/402924

レ・ミゼラブル〈下〉 (岩波少年文庫)
ミリエル司教の施しに心動かされ良心に従い続けたジャンバルジャン、その彼の善行に圧倒され法と道徳の狭間で自ら命を絶つジャベール。善行だけで社会が成り立たないことはわかっている。しかし、ジャンとジャベールの葛藤は何故心を打つのだろう。良心の可能性と限界を示した偉大な作品。
読了日:07月24日 著者:ヴィクトル ユーゴー
https://bookmeter.com/books/402925

■少年の魔法のつのぶえ―ドイツのわらべうた (岩波少年文庫 49)
聖人は魚に説教し鐘はりんらんと鳴り響く。恋人に会うために鳥になりたいと願う女の子がいれば、界面を隔て引き裂かれた男女がいる。人生の虚無を歌ったものもあるのでドイツのマザーグースと言われるのも分かるが、聖書や動物がモチーフになっているのは、やはりロマン主義の国。絶望はあってもその先に神や天使が待っいて、その辺もイギリスとの違いを感じさせる。グリム童話とあわせて読んでおきたい一冊。
読了日:07月24日 著者:
https://bookmeter.com/books/35231

グリム童話集 上 (岩波少年文庫)
冒険譚に立身出世、女官による陰謀から姫様より与えられた試練まで何でもあり。宮廷から庶民まで登場人物は様々だが結婚や出世に焦点を合わせていて、そのあたりはペローよりも大衆的だと感じた。ガチョウ番の娘の陰謀が好き。
読了日:07月25日 著者:グリム
https://bookmeter.com/books/379750

■ストーカー (ハヤカワ文庫 SF 504)
向こうにはコンタクトする気はない、重要な役割を果たしているゾーンでさえ、題名通り「ピクニック」の途中で落としていったものでしかない、というあたりソラリスと共通している。卑小な人間と未知で広大な宇宙という対比は東欧ではよくある設定なのだろうか。廃品となった異物を業者が拾いに行くあたりもソ連という感じでよかった。アメリカなら科学者が「観測」するんだろうけど、そういう職種的なものさえ特権なんだろうな。
読了日:07月26日 著者:アルカジイ ストルガツキー,ボリス ストルガツキー
https://bookmeter.com/books/1390

■Metro2033 上
ロシア製ポスアカ。西部劇を土台にした欧米の終末ものとは違い、世界が終ってもセクトを形成しているあたりロシアっぽい。WWIIみたく人種選別と浄化を行うファシストの駅、モスクワを目指して”侵攻”を繰返すコミュニストの駅。そこまでイデオロギーを持っていかんでも……と若干引く一方でエリオットを経由せずに世界の終わりを描くとこうなるのか、という発見もあった。あとキノコを煎じたお茶や歌と踊りが娯楽になっているところも風土を感じさせてよかった。
読了日:07月30日 著者:ドミトリー グルホフスキー
https://bookmeter.com/books/328435


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