2013/06/01-

時間の無駄だから読まないほうがいいよ。

画集が届いた。

 

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 このゲームの舞台は奈良の南部に位置する御杖村。しかもヤマノカミなるものが登場する。大和三山の近くでしかも山岳信仰とくれば、資料集には柳田国男とか民俗学周辺についての記述を期待するしかない。していた、のだけれど、その辺はノータッチだった。いやまぁ、山岳信仰とはいえ信仰よりも呪いや転生といったものに重点を置いていたからそういうものを求めるのは間違いなのかもしれない。関係がある、と思ったこちらの落ち度か。

 民俗学に関わるものでオカルトというと朝霧の巫女を思い出すけど、あれはあれでイデオロギーをモザイク状に並べた物語のような何か(記紀神話を軸に組織を立ち上げる新政府軍と須佐之男楠木正成と熊沢が対立する世界って何なんだ)、だったし意外とあの界隈を物語に仕立て上げるのは難しいのだろう。今の好みに合わせれば合わせるほどファンタジー染みてくるわけで、そうすれば原点を見失う。むしろADVとしてはこれくらいの軽快さがないといけないのかもしれない。終ノ空のようにニーチェが、ウィトゲンシュタインが、と嬉々として語る方がどうかしている。

 いやでも、画集としての見所は多い。CGはたかみち。今やLOの表紙の人と紹介すれば誰もが理解するであろうあのたかみち先生で、キャラクターも背景も画としての完成度が相当高い。2000年代のゲームでこれほどきれいな作品も珍しいと思う。ゲームの方はADVの多重構造を利用した物語になっていて面白いのだけれど、それとは別に画集としての楽しみは多い。そういう意味では買ってよかった。

 あと機会があるたびに言っているのだけれど、このADVはOPがすごい。まず何の話かわからない。ヤマノカミ、文乃、不穏なキーワードはでてくるけれど、粗筋はない。村で何かが起こる、それだけ。それともう一つは語る親も教師も当事者意識がまったくない。我が子の話なのに誰もが無関係を装っている。実際そのような物語なのだけれど、その冷たくあしらっている感じが作品の世界観を見事に表象している。ADVのオープニングというと最果てのイマなど完成度が高いものは多いのだけれど、ここまで「臭う」ものは珍しいと思う。ゲームそのものもおすすめ。名作。


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