2013/06/01-

時間の無駄だから読まないほうがいいよ。

「さよならを教えて」の雑感

 ADVについてはブクログに移行していたのだけれど、あまりにも使い難いので帰ってきた。読み終えた本を積読から読了に変更するためだけの妙な手順、すぐには反映されないタイムライン……そもそも積読以前の段階の「未分類」とは何。手にとっていないとか、所有してはいるけど頁は開いていない、あるいは認識論的なやつか?まぁ、そういうわけで帰ってきました。(誰も読まないだろうけど)

 今回は泣く子も黙る値段と狂気を誇る「さよならを教えて」。「終ノ空」、「ジサツのための101の方法」と並ぶ、いわゆる三大電波ゲーのひとつで電波ゲーの代名詞となっている。とはいえ、中身がそれほど狂っているか、というとそうでもない。ビジュアル面は確かに雑踏としているが、一歩引いてみると事実関係はしっかり整理されているし、「妄想」のベールを剥がせばきちんと「現実」が見えるようにできている。ミステリー界隈だとミスリードといわれる認知トリックがいたるところに仕掛けられていて、何度もプレイし、読み直すことの出来る良作だ。三大電波ゲーのひとつでインパクトもすごいが、三つの中ではいちばん文章もグラフィックも丁寧で馴染みやすい。


 ヒロインそれぞれに別の視点を割り当てる事で、現実との向き合い方を変えているのが面白かった。天使を送り出せば女の子を退院させることにつながり、女の子と戯れたらネコの悪夢を思い出すことになる。逆に担任するはずの女の子と向き合わなければ「妄想に引きこもっている」と非難される。ジキルとハイド、カリガリ博士ファイトクラブ解離性障害をモチーフにした作品はいくつかあるけど、恋愛対象それぞれによって整合性をとっている作品はこの作品くらいではないか。

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 なお媒体の性質上の問題で仕方がないことなのだが、この作品はムービーだけでは立体感がいまひとつ伝わらないと思う。例えば退院する女の子を見送る√とトラウマから拘束具で縛られる√では、その後の病院のエントランスの見え方がまるで異なる。それぞれのヒロインが掘り起こしたトラウマとそれに対応する病院が隠喩的に示される物語なので、マルチエンディングでゲーム全体を見渡さないと本質は明らかにならないからだ。一本筋では単なる「夢オチ」に終わってしまう。単に「夢オチもの」として片付けているレビューをちらほら見かけるのでそんなことを思ってしまった。
 完成度は終ノ空やジサツよりも高いし、再販しないだろうか。終ノ空リブートの素晴らしき日々なんかは直にこの作品の影響を受けているわけだし、何とか歴史に残ってほしい。


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