死に向って雪崩れ込んでいく感じはいいのだけれど、いまいちインパクトにかける。得たいが知れないから怖いとか、一枚皮を剥いでみれば合理的だったとか、ホラーやミステリー的な快楽がない。いや、そんな理屈っぽく考えるのではなく虚無の裏側にはりついたような詩情を味わうべき作品なのだろう。けれど、その曖昧さが苦手だったのだろうと思う。曖昧なものを曖昧なまま残すのもかまわないし、逆に合理的だったとしてもかまわないのだけれど、ニヒリズムが単なる心情の問題にされてしまうと物語に騙されたような気分になるからどうも苦手だ。改めて言うと「ジサツ」のディテールはよかった。