2013/06/01-

時間の無駄だから読まないほうがいいよ。

2025年9月の読書メーター

2025年9月の読書メーター
読んだ本の数:2冊
読んだページ数:200ページ
ナイス数:38ナイス

https://bookmeter.com/users/159174/summary/monthly/2025/9
■交感する神と人 ヒンドゥー神像の世界
 2023年の国立民族学博物館特別展『交感する神と人』の図録。ヒンドゥー教儀礼に焦点を合わせた展示で信仰対象との双方向的なやりとりを重視しているのが印象的だった。ガネーシャの神像供物を“与え”、クリシュナをあやし、ヴィシュヌやパールヴァティ―のポスターと視線を“交わす”。目の前に神がいるように振舞い、対等に接しようとする姿は新鮮であると同時に親しみやすい。遡及的ではあるがキリスト教の聖体拝領や仏教の護摩(元々ヒンドゥー教儀礼なので原点回帰というべきか)を思い出した。

 なお実際の展示では信者が神像をあやす礼拝やジャナムアシュタリーと呼ばれるクリシュナの祭(人間ピラミッドをつくって吊るされた器を割る)の映像が上映されていた。定期的に礼拝開始の太鼓が鳴り響くなど館内は賑やかで、実に民族学博物館らしい展示だった。読了日:09月14日 著者:国立民族学博物館https://bookmeter.com/books/21709659

 

■世界の名著〈1〉バラモン教典,原始仏典 (1969年)
 言うまでもなくバラモン経典は原始仏典や以後のあらゆる経典の種本ではあるのだが、バラモンにはバラモンなりの理屈……というか世界観があるということを心底思い知らされた。なるほどヴァガヴァットギーターから輪廻転生を読み取るのは容易い。しかし、それはマハーバーラタの戦場に赴くアルジェナの心理として読むから物語の次元において理解しているだけであって、他の教典を考慮するか否かで見方はまるで変ってくる。

 クリシュナの云う「翳質の優勢なときに死ぬ者は愚者の胎内に生まれる」とはウパニシャッドの自然循環論の内での生命の有り様であり、また不二一元論の汎神論を前提としている。おそらくバラモン教のような世界観は仏教の苦の連鎖からの脱出を目指すという人間中心的な発想からは出てこないだろう。バラモン教にとって世界はブラフマーの内部で循環するものであって抗うものではない。これはここではないどこかへの脱出を目指す解脱と世界を受け入れようとする梵我一如の手段の違いにも表れているのではないか。
 風や煙といった自然の動的な表象が輪廻転生を具体化する役割を担っているのも面白い。人間の精液と月(液を満たす器の表象)が流体で結びついているあたりなど端的だろう。この流体的なイメージは不二一元論を理解するうえでも欠かせない。形を成さないからこそブラフマーが普く行き渡るのが可能なのであり、だからこそアートマンとグラデーションを成すこともできる。
 ウパニシャッドが新プラトン主義風なら不二一元論は普遍論争に相当する内容で、後者は汎神論的世界観において「個我は存在するか」という問いに「名は名でしかなく実在するのは神のみ」という答えを出している。流体的なイメージは流出論とはやや異なるが世界観と問題意識、言葉の有り様が中世キリスト教と同じ方向を向いていたのは興味深い。

 論証学入門はカントとアリストテレスを足したような雰囲気。前半では認識が成立するまでを物自体から離れて感性と悟性に依る理論理性(指向性があるので細部は異なる)で説明、後半はインド風の三段論法や範疇論。前後は独立しているのではなく二つの前提の間には物自体を論拠として取り上げる際の動機や命題動詞をつなぐ様々な類推が働いている等々の説明がなされている。カントは近代哲学の祖として扱われているけれど、同じくらいに総合的なことが二千年前に書かれていたとして読みながら唸ってしまった。
 原始仏教関係は既読だったのだが、バラモン経典とジャイナ教綱要に大きな影響、というかほとんど地続きなのがわかって面白かった。認識から業がうまれ(非実体的な)身が業をまとう、修行でそれをはらうという基本的な内容は両宗教からそもままもってきている。特にジャイナ教からの影響は濃厚で、原子(微点)から成る世界観はそのまま縁起説につながっている。両者は因果の有無で対立したが、古典物理と量子論の違いのようなもので物質素材に対する見解そのものに大きな差異はなかったようだ。

 戒律周辺はジャイナ教が八正道や五戒を説き、仏教が四諦を後付けしている。因果の否定やそれに基づいた諦念がないと四諦四法印は構成できないからあとになるのはあたりまえだが、日本仏教でもおなじみの戒律が仏教以前の宗教を起源なのは驚きだった。五戒は苦行とも結びつく概念ということは心に留めておくべきだろう。他にも原始仏典には反論という形で六師外道に唯物論性善説について語られていたりと面白い記述がちらほら見受けられる。仏教を学ぶ上で外せない書物。


読了日:09月24日 著者:
https://bookmeter.com/books/662975


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