2013/06/01-

時間の無駄だから読まないほうがいいよ。

2024年10月の読書メーター

三国志曼荼羅 (岩波現代文庫 文芸 119)
三国志演義)をふわっと補強しつつ国家から英雄に至るまで多角的に解説した本。正史、演義はもちろん、横山や吉川も補うもので副読本としても使える。内容は組織構造、英雄論、日本での受容の三本立てで、魏呉蜀のそれぞれの性質にはじめて、そこでの武将武官の役割、英雄たちの実績、性格とどんどん深堀する構成をとっていて非常に読みやすい。それなりに正史を意識してはいるが主要人物以外のことは殆ど出てこないので、そこのところも良心的だった。
 三国志というと義絶の関羽、奸絶の曹操、智絶の孔明だが、本書は関羽を置いて周瑜を取り上げている。このことで呉という国の性格や見所がはっきりし、また三国全体の見通しや関係性を見渡せるようになった。内容は孫策との友情、若手の孫権を支え続けた良心、内政面で有能だった張昭に比して攻撃的だったことなどが取り上げられている。これら孫呉との関係はそのまま豪族出身の孫家の説明になるし、張昭との比較は赤壁前の降伏派と開戦派のやりとりに絡むことなので小説から一歩踏み出すには良い知識だと思う。
 また他の二人も曹操は乱世の肝雄像の発達過程、孔明は武官としてよりは内政での活躍を強調してそれぞれバランスをとっている。曹操の破天荒ぶりは周瑜の良心に対応するものだし、また孔明の信賞必罰、産業振興はそれだけでも従来のイメージを覆すもので面白い。(孔明本ではたまに指摘されていることではあるが)
 後半は雰囲気が変わって三国志のバージョン違いの説明。陳寿三国志羅貫中三国志演義とそれを形成する講談や元曲(平話も出てくる)、湖南文山から吉川英治陳舜臣までの日本における受容史まで網羅している。自分の読んでいる三国志がどの系譜を引いているのかを実感することができる内容だった。
読了日:09月12日 著者:井波 律子
https://bookmeter.com/books/513880

三国志平話
三国志演義の種本其の二。陳寿三国志裴松之の注釈が戦勝国である魏晋の歴史と敗戦国蜀の思想的な鍔迫り合いなら、こちらは庶民が編み上げた娯楽大作。講談の小噺を集成した本だけあって矛盾が多く、演義に比べると叙事詩としての面白さに欠ける…のだが、とにかく娯楽としてよくできている。張飛は督郵を滅多打ちにした上に”身体を六段に分割”し”首と手足をそれぞれ吊る”し、長坂の戦いでは一喝で橋を落とす始末。
 荒唐無稽ながら一つ一つの小噺の勢いは確かで、血湧き肉躍る英雄の活躍が語りを通じて場を多いに盛り上げたことは想像に難くない。三兄弟の中でも張飛が抜きん出て庶民に人気があったのも納得できる。(劉備蜀漢正統説を信じる知識人、関羽は仁義を大切にする商人(山西)
 また創作部分も演義とは少し違っていて、貂蝉呂布の生き別れの妻だったりする。ということは王允の策謀は美人局ではなく妻との再会で、貂蝉も養女ではないから孝行ではなくなる。孫尚香ら女性たちの多くは元代で三国志に取り入れられたというが見識も様々だったのだろう。清代の京劇ではまた違った扱いになるようだがその原点を見ることでできてよかった。(平話は元代)
 他にも馬謖が単なる猪突猛進馬鹿になっていたり、官渡は関羽顔良文醜を斬った話が主になっていて戦略面は大幅に省略されている。と、いうかわかりやすさを重視した修正がなされている。説明的で理屈で理解すべきもの、視聴覚に訴えない退屈な要素は省略したということなのだろう。後の京劇にもいえることだが媒体の特徴が出ていているのが興味深い。
 三国志というと何かと正史が重視されがちだが演義がなければこれほど広がらなかっただろうし、平話がなければその演義もなかった。三国志の源流であると共に(正史にはない)劇的な魅力とは何かを思い知らせる一冊。副読本として重要かつ普通に面白いので文庫化してほしいですね……。
読了日:10月22日 著者:二階堂 善弘,中川 諭
https://bookmeter.com/books/497258

三国志外伝: 民間説話にみる素顔の英雄たち
民話で構成した三国志の小噺集。当然正史とは異なるのだが、かといって演義や平話と似てもいない、独特なつくりのものが多い。関羽は最初の頁から天帝の子と書かれていて、龍の角をへし折ったり大風を吹かせて川の流れを変えてしまったりと大活躍(曹操が嫌味で自分の遺体を感潮河川に埋めたから)。一方で張飛は不具の悪人を引っ掛けたりと頓知を効かせていて、従来の印象とは逆を行く人物造詣がなされている。
 女性に関する改変も多い。周瑜に火刑を提案したのは小喬八卦の陣は黄夫人の教えというのは演義に親しんだ者にはなかなか衝撃的だった。(そもそも孔明の私事が珍しい)また関索鮑三娘の馴れ初めが関羽との再会前だったり、張飛関銀屏を溺愛してるというのもキャラ付けがふにゃふにゃしていて良い。
 華佗などは盛られすぎて神仙の域に達している。曹操に勘ぐられて酷い目にあった、ということは演義を読めばわかるが、あとで曹操の夢に現れて”頭痛を治すために脳をじゃぶじゃぶと洗う”など誰が想像できよう。彼には他にも不細工な貂蝉を整形するために首ごと挿げ替えていて、于吉や左慈など目ではない個性を放っている。三国志の傍流を知るにはもってこいの一冊。
読了日:10月22日 著者:
https://bookmeter.com/books/1386709