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印象 2013/06/01-

オールタイムベスト http://efnran.hateblo.jp/entry/2016/01/01/000000

九月の読書やら鑑賞やら何やら

 

子ども兵の戦争

子ども兵の戦争

 

 


 少年兵概論。同著者の「戦争請負会社」の続編的な作品で、東西冷戦崩壊後に起こった倫理観とイデオロギーの暴走について少年兵の視点からレポートしている。

 非常に道徳的な問題を含んだ題材ながら、貧困に喘ぐ子どもからすれば募兵はむしろ希望であること、組織側にしても少年兵は安価で扇動し易くて利益が一致していること、また素直な子どもは人海戦術に投入するには極めて優秀であり、生き残って飲み込みの良い時期に戦闘技術を磨けば正規軍にも負けることはないといった雇う側、雇われる側双方の利益を消化しており、率直な態度をとっているのが印象深い。

 他にも拉致強姦した少女に子どもを産ませ、施設に預けてから再度徴兵する再生産制度、人殺に対する倫理的な抵抗感を削ぐために子ども同士を殺しあわせたり家族を殺させる方法二つ名を与えて罪の意識を逸らすなど、合理的だが人間の限界に挑戦するような技術が紹介されている。特に親兄弟を殺させる方法は倫理観の解除に加えて、故郷への脱走を阻止する力があるというのが驚きだった。
読了日:9月8日 著者:P.W.シンガー

 

 

ロード・オブ・ウォー Blu-ray

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武器商人概論映画。ソ連崩壊によって、より苛烈になった兵器の横流しを風刺した作品。ロシアでのUZ1転売にはじまり、ウクライナの武器貯蔵庫の武器のために将官に取り入り、レバノンは壁一枚隔てて少年らが虐殺されている廃墟の中で、スーダンではレーガンのポスターを穴だらけにして威力アピールしながら、リベリアではAKを振りまわし、ダイヤと引き換えに手に入れたAKで側近を撃ち殺すような将軍とアメ車を乗り回しながら「商談」していく姿が、不可思議なロードムービーのような印象を残す。

 冒頭、紛争のメッカといえるアフガンに到達し、AKの引き金の音がレジのレバー音に聞こえてくるシーンや、ウクライナのレーニン像に腰掛けながらAKの取引金額について電卓を叩く様子がソ連の崩壊とその後の秩序を象徴しているようで感動的だった。
鑑賞日:09月26日 監督:アンドリュー・ニコル

 

 

ジョニー・マッド・ドッグ [DVD]

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 リベリアの少年兵物語。反政府組織に父殺しを強制され故郷を失った少年兵が傷口にコカインを塗って勇気を取り戻し、従順な者は犯し、反抗的な者は撃ち殺し、ミリタリーケイデンスの替え歌でAKを掲げて舞踊踊り、勝利の雄叫びを上げる。ホッケーマスクに天使の羽、果てはウェディングどれすまで略奪したものを片っ端から身にまとった衣装の混沌、銃声と雄叫びにあわせて次々とカットが入れ替わり、略奪だけが人生さと言わんばかりに進行していく映像がひたすら恐ろしく、またこれらの戦が我々の考える指揮系統のはっきりとした正規軍同士の殺し合いとは次元をことにすることを思い知らされた。
鑑賞日:09月24日 監督:ジャン=ステファーヌ・ソヴェール

 

 

死に急ぐ鯨たち (新潮文庫)

死に急ぐ鯨たち (新潮文庫)

 

 


 86年のエッセイ。「集団化の契機としての(結婚、葬)儀式、建国の号令としての国歌、それら”言葉”から解体し個別化する文学もといドストエフスキー」、「植民地文化としての文学、侵略者としてのロビンソン、それを超克する存在としての南米はマルケス」、「文化格差を非難しながら、東南アジアを混沌だと認識し、自国の禅文化を称える矛盾した存在である日本人」等々、時代柄なのか、国家論絡みの話題が収録されている。科学的記述法はそもそも記述不能なものについて説明しないから、科学側から超能力なる言葉が発せられるのはおかしいというような指摘が面白かった。
読了日:9月19日 著者:安部公房

 

 

ゆゆ式 (7) (まんがタイムKRコミックス)

ゆゆ式 (7) (まんがタイムKRコミックス)

 

 


相変わらずハイコンテクスト、レトリックを駆使しすぎていて読解に時間がかかる(が、それが逆に女子高生のヒソヒソ話を聞いているような錯覚に陥れる)。「耳の中でガサゴソ音が鳴るのは、ガサゴソ音を鳴らす猫がいるせい」、「かしこい人間は人の優しさすら賢さの一部に還元してしまう」、「長靴に入ったドレッシングをかけるのは可哀想な行為」、「よしんばちっちゃいものだとしても、耳に猫ははいらない」。ああ、最高だ。
読了日:9月18日 著者:三上小又

 

2015年9月の読書メーター
読んだ本の数:8冊
読んだページ数:1722ページ
ナイス数:40ナイス

イスラーム原理主義の「道しるべ」―発禁“アルカイダの教本”全訳+解説イスラーム原理主義の「道しるべ」―発禁“アルカイダの教本”全訳+解説感想
ムスリム同胞団のプロパガンダ。原理主義者の聖典と化すほど影響力のあった本だが、良くも悪くもソ連全体主義の思想とよく似ている。階級の消滅や思想的な自由を聖戦によって獲得すべきだと主張する一方で、それらを実現し統制するシャーリアに反する思想は滅ぼされるべきだと二重規範的な見解を何食わぬ顔で提示し、西欧思想との対決をうたいながら、
読了日:9月26日 著者:サイイドクトゥブ
死に急ぐ鯨たち (新潮文庫)死に急ぐ鯨たち (新潮文庫)感想
86年のエッセイ。「集団化の契機としての(結婚、葬)儀式、建国の号令としての国歌、それらを意識レベルから解体し個別化する文学もといドストエフスキー」、「植民地文化としての文学、侵略者としてのロビンソン、それを超克する存在としての南米はマルケス」、「文化格差を非難しながら、東南アジアを混沌だと認識し、自国の禅文化を称える矛盾した存在である日本人」等々、時代柄か国家論が多い。他にも科学的記述法はそもそも記述不能なものについて説明しないから、科学側から超能力なる言葉が発せられるのはおかしいというような皮肉交じり
読了日:9月19日 著者:安部公房
ゆゆ式 (7) (まんがタイムKRコミックス)ゆゆ式 (7) (まんがタイムKRコミックス)感想
相変わらずハイコンテクスト、レトリックを駆使しすぎていて読解に時間がかかる(が、それが逆に女子高生のヒソヒソ話を聞いているような錯覚に陥れる)。「耳の中でガサゴソ音が鳴るのは、ガサゴソ音を鳴らす猫がいるせい」、「かしこい人間は人の優しさすら賢さの一部に還元してしまう」、「長靴に入ったドレッシングをかけるのは可哀想な行為」、「よしんばちっちゃいものだとしても、耳に猫ははいらない」。ああ、最高だ。
読了日:9月18日 著者:三上小又
カラシニコフ銃 AK47の歴史カラシニコフ銃 AK47の歴史感想
AKから見た世界紛争史。ロシアの広大で過酷な大地に耐えるようにブローニングをモデルに設計した頑丈簡素な銃が、巡り巡ってビンラディンの胸に収まるまでを8つのエピソードで解説。ベトナムでは密林や泥沼、アフガンでは砂漠の熱風に耐え、ヤワなM16を超す勢いで活躍し、パレスチナではイスラエルに対する抵抗の象徴となり、アフリカでは子どもにカラシと名付けられる程に愛され、ついには英国の学生がAK片手に反米的な発言をするだけでテロリスト扱いされかねないという、
読了日:9月14日 著者:マイケル・ホッジズ
子ども兵の戦争子ども兵の戦争感想
少年兵概論。戦争請負会社の続編的な著書で、東西冷戦崩壊後に起こった倫理観とイデオロギーの暴走について少年兵の視点からレポート。非常に道徳的な問題を含んだ題材ながら、貧困に喘ぐ子どもからすれば募兵はむしろ希望であること、組織側にしても少年兵は安価で扇動し易くて利益が一致していること、また素直な子どもは人海戦術に投入するには極めて優秀であり、生き残って飲み込みの良い時期に戦闘技術を磨けば正規軍にも負けることはないといった事実を紹介するなど、非常に率直な
読了日:9月8日 著者:P.W.シンガー
今日の早川さん 2今日の早川さん 2感想
意識の高い本読みあるある。連想ゲームの途中でSFは幼稚だ稚拙だと文句を垂れる純文学屋、夏と扉と聞くとハインラインを思い出すSF者と、それをSF者あるあるのひとつとして馬鹿にする古本屋のレイシストっぷりが際立っている。大学のサークルに時々こういう人たちはいるけど、私生活でよく交友を保ってられるなと感心する。
読了日:9月5日 著者:coco
今日の早川さん今日の早川さん感想
本読み、特にSF者風刺。影でこそこそとベストセラーを手にとる人を笑うSF者、SFを幼稚と笑い飛ばし記号だの象徴だのと批評用語を連発する純文学屋、最底辺でほそぼそと本を手に取るラノベ者。読書体験の本質を探ったバーナード嬢とは違い、本読みのヒエラルキーや気持ち悪さをストレートに描いているのがえぐくて面白かった。
読了日:9月5日 著者:coco
けものたちは故郷をめざす (新潮文庫 あ 4-3)けものたちは故郷をめざす (新潮文庫 あ 4-3)感想
敗戦を知り逃げ惑う群衆、職務を放棄して闘争を図る憲兵国共内戦の勃発と混沌とした満州、一斉に故郷を目指す日本人の集団、そこから空腹を藁を噛んで我慢し、錯乱し僅かな食料を食い散らかす仲間を背負い、凍傷で傷んだ指を切断し、それでもなお四季と富士山のある故郷への憧れ胸に荒野を進む主人公等々の描写が大陸における
読了日:9月3日 著者:安部公房

読書メーター

 

9月の鑑賞メーター
観たビデオの数:7本
観た鑑賞時間:786分

ロード・オブ・ウォー Blu-rayロード・オブ・ウォー Blu-ray
武器商人概論。ソ連崩壊によって、より苛烈になった兵器の横流しを示すかのようにロシアでのUZ1転売にはじまり、レバノンは壁一枚隔てて少年らが虐殺されている廃墟の中で、スーダンではレーガンのポスターを穴だらけにして威力アピールしながら、リベリアではAKを振りまわし、ダイヤと引き換えに手に入れたAKで側近を撃ち殺すような将軍とアメ車を乗り回しながら「商談」している姿が、奇妙なロードムービーのようで面白い。アフガンに至るまでには、AKの引き金
鑑賞日:09月26日 監督:アンドリュー・ニコル
ジョニー・マッド・ドッグ [DVD]ジョニー・マッド・ドッグ [DVD]
リベリアの少年兵物語。反政府組織に父殺しを強制され故郷を失った少年兵が傷口にコカインを塗って勇気を取り戻し、デスディーラーの名の下に従順な者は犯し、反抗的な者は撃ち殺し、ミリタリーケイデンスの替え歌でAKを掲げて舞踊踊り、勝利の雄叫びを上げる。ホッケーマスクに天使の羽、果てはウェディングどれすまで略奪したものを片っ端から身にまとった衣装の混沌、銃声と雄叫びにあわせて次々とカットが入れ替わり、略奪だけが人生さと言わんばかりに進行していく映像がひたすら恐ろしかった。
鑑賞日:09月24日 監督:ジャン=ステファーヌ・ソヴェール
ブラックホーク・ダウン [Blu-ray]ブラックホーク・ダウン [Blu-ray]
ホテル・ソマリア。コーラ片手に猪肉をつまんでいた米兵らがブラックホークと共にモガディシュの街に飲み込まれる。非常に環境映画的な作品で、民兵の個性を捨て去り人間の壁で米兵を押しつぶそうとする様子は、プラトーンの密林を忍び足で這いまわり影として戦ったベトコンを彷彿とさせる。津波のようにAK片手に押し寄せる民兵ホバリングするヘリが舞い上げる砂埃が生み出す空間的な広がり、逆に車幅ギリギリで、窓という窓から銃弾が降り注ぐ中を突っ走るハマーの車列が閉塞感を与えているのが印象的だった
鑑賞日:09月24日 監督:リドリー・スコット
アフガン零年 [DVD]アフガン零年 [DVD]
(03)アフガンはタリバン政権下の男装少女。タリバンによる圧政を非難する作品でありながら、弾圧それ自体よりも崩壊していくアイデンティティに焦点を合わせているのが印象的。男として働くためにブルカと靴を脱ぎ、シャーリアを乱用し女性を罰するタリバンに怯えて少女時代を写した写真を焼却し、軍事教練を受けるために髪を切ってターバンを巻き、肉体の尊厳を放棄して男たちの清めの儀式に参加し、最後には処女を奪われる光景には殴る蹴るといった物理的暴力以上の底知れぬ痛みがある。
鑑賞日:09月16日 監督:セディク・バルマク
アフガン [DVD]アフガン [DVD]
(05)ロシア兵視点のアフガン侵攻。山道を走れば山陰からRPGによって装甲車ごと火達磨にされ、村を通り過ぎれば背後から撃たれるソ連兵。忍び足で迫るムジャヒディンの攻撃が精神を傷めつけ、やがて居眠り歩哨へのリンチ、軍事教練中の教官の暴力へと変質する。フルメタに似た作品構成ではあるが、教官はシゴキの責任をアフガンでとろうと花畑で涙を流し、古参兵は戦場での強さをもって正当性を示そうとするあたりが怨念のこもったキューブリックのそれとは根本的に異なり、またそういった場面で必ず登場するウォッカの一杯がロシア的な人情を
鑑賞日:09月15日 監督:フョードル・ボンダルチュク
レッド・アフガン [DVD]レッド・アフガン [DVD]
T-55遭難劇。民家を周囲の土壁ごと空爆と砲撃によって粉砕し、飛び出してきた女子供を火炎放射で焼き払い、排気音高らかに尋問名目で履帯で老人を轢き殺し、井戸には毒を撒き散らす程の執念を持ってムジャヒディンを掃討するソ連と彼らを岩陰からそっとAK47で撃ち殺すムジャヒディン、取り残された軍人らを意志で叩き殺すアフガンの女達の応酬につぐ応酬がイデオロギー戦の底知れぬ恐怖を現し、ふとした瞬間に現れる履帯にこびりついた肉片や炎上する僚車を前に流れる涙が敵味方を超えた何かを提供する。
鑑賞日:09月07日 監督:ケヴィン・レイノルズ
鬼戦車T-34 [DVD]鬼戦車T-34 [DVD]
T-34/76脱走劇。戦車をつかった脱出劇という戦争映画風の設定ながら、収容所では死体それ自体は存在せず、ただ吊るされた男の影がサーチライトの中に浮かび、ソ連女囚収容所では女囚たちの嘆く声に包囲されつ花畑を踏み荒らしながら爆走し、ビル樽ポルカの流れるドイツの街を石像壊しながら駆け抜け、意志の勝利の上映スクリーンを突き破る等々、政治的寓意と幻想的な雰囲気が合わさった作品だった。まぼろしの市街戦等、幻想的に戦争を表現した作品は他にあるが、戦車という重車両をふんわり穏やかに描いたものは、これくらいではないだろう
鑑賞日:09月07日 監督:ニキータ・クリヒン,レオニード・メナケル

鑑賞メーター