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印象 2013/06/01-

オールタイムベスト http://efnran.hateblo.jp/entry/2016/01/01/000000

五月の読書やら鑑賞やら

 ベスト5

樹木葬 -死者の代弁者- (ガガガ文庫)

樹木葬 -死者の代弁者- (ガガガ文庫)

 

 

大人になった人殺しと子育てのはなし。口をきけない死者に対する軽蔑心と僅かに残った罪の意識が交錯する。この世はムカつくことばかりだと繰り返しながらぐるぐる同じ場所をノタウチまわる光景や、自意識の篭もり具合が(社会に出たとしても)思春期や罪を死ぬまで記憶として背負わなければならない、人間の悲劇を表しているようで興味深い。ここまで純粋に高二病をきちんと処理した作品はいままでなかったのではないだろうか。
読了日:5月19日 著者:江波光則

 

密葬 -わたしを離さないで- (ガガガ文庫)

密葬 -わたしを離さないで- (ガガガ文庫)

 

 
ディケンズは好きか?」計算高い恐喝屑に計算高いメンヘラを寝取られた人殺しが引用集を片手に殴り合う。本から得られる精神の安定や自己満足的な内罰はいくら頑張っても現実と向き合う事にはならない等々(特に本読みや物書きの)自意識をちくちくと刺すような心理描写は前作よりも深く鋭い。また、これほどディケンズの名を爽快に扱った作品はないだろう。
読了日:5月19日 著者:江波光則

 

時計じかけのオレンジ [Blu-ray]

時計じかけのオレンジ [Blu-ray]

 

 

71年公開の罪と罰。ロシア語風の英語を話し、雨に唄えばにあわせて老人を殴る蹴る不良アレックスの物語。いつものキューブリックらしくセットは幾何学的に配置され、カメラワークは冷淡だが、そういった無機質性が暴力と見事に溶け合っている。”歌い”殴り“聞く”主人公の行いすべてが裏返り、彼を責め立てる材料となる後半の描写は原作以上のインパクトがあった。視聴覚すべてに訴えかける、混沌と秩序が共存した素晴らしい政治劇だった。
鑑賞日:05月04日 監督:スタンリー・キューブリック

 

大病人<Blu-ray>

大病人<Blu-ray>

 

 

三國連太郎最後の一年、色情狂の映画監督が胃癌に命を落とす。冒頭の強引なベッドインから吐血を隠そうと歪んだ笑顔で対応し、余命宣告を受けて手の震えが止まらなくなり、衰弱し車椅子に頼らざるおえなくなる三國の演技が津川その他の役者の演技すべてを飲み込んでいる。半世紀に渡る活動で手に入れた、彼の強さと弱さをすべて過ぎ込んだ傑作医療映画。「俺が病院に来る前はなにしていたと思う?胃薬飲んでたんだよ!」
鑑賞日:05月31日 監督:伊丹十三

 

お葬式<Blu-ray>

お葬式<Blu-ray>

 

 


大病人のその後。死とその後の葬式につきまとう物語的な悲劇性を日常感を確保することで排除。はじめての葬式に戸惑いつつもVHSを参考に事務的に遺体の引き取りから葬式までをこなしていく山崎努宮本信子、兄弟全てを亡くし慣れきってしまった大滝秀治が自信満々でボケを連発し、部屋の隅ではそれぞれの子供たちが駆け回る。儀式を題材とするなら排除されて然るべき要素が自然主義的な照明のもとで当然のように演じられることで、喜劇的な雰囲気を醸し出しているのが面白い。
鑑賞日:05月31日 監督:伊丹十三

 

 

アメリ [Blu-ray]

アメリ [Blu-ray]

 

 


(01)アメリ・プーランの素晴らしい運命。家に囲われた女の子の恋が成熟するまで。ブリュレのカラメルを叩き割ったり豆袋に手をつっこんだり、金魚屋家具と対話するといった主観的、妄想的要素が(あざとい)パリの町並みや色彩と絡み合って混沌。誰もが体験するであろう、世界そのものを認識できた、物事の尺度を持っていなかった幼児期を思い出させる作品だった。
鑑賞日:05月17日 監督:ジャン=ピエール・ジュネ

 

 2015年5月の読書メーター
読んだ本の数:18冊
読んだページ数:4682ページ
ナイス数:83ナイス

北欧女子オーサが見つけた日本の不思議 (メディアファクトリーのコミックエッセイ)北欧女子オーサが見つけた日本の不思議 (メディアファクトリーのコミックエッセイ)感想
北欧ヲタの日本滞在記。場所取りのために携帯やバッグを置き去りにして注文を取りに行く人たちの無防備さに驚いたり、電話の前でおじぎしたり、割り勘支払いに戸惑う等々の日常の細部からの発見、帰省時に多量の調味料や食肉に対して周囲から説教されたなどのスウェーデンと日本の文化的差異が興味深い。特に帰省編の健康/環境ファシズムについての話は米や西欧の旅行記とは国色がはっきりと別れていて面白かった。喧嘩を売る時は「日本で鯨を食べた!!」と言いましょう。
読了日:5月30日 著者:オーサ・イェークストロム
新興宗教オモイデ教 (角川文庫)新興宗教オモイデ教 (角川文庫)感想
高二病外道祭。
読了日:5月26日 著者:大槻ケンヂ
ヨコハマ買い出し紀行 1 新装版 (アフタヌーンKC)ヨコハマ買い出し紀行 1 新装版 (アフタヌーンKC)感想
ロボットの一人住まい設定のせいで、作風三割増しで泣いた。
読了日:5月25日 著者:芦奈野ひとし
ゆゆ式 (4) (まんがタイムKRコミックス)ゆゆ式 (4) (まんがタイムKRコミックス)感想
お前は外でハダカです。はずかしーですねー。
読了日:5月25日 著者:三上小又
ゆゆ式 (3) (まんがタイムKRコミックス)ゆゆ式 (3) (まんがタイムKRコミックス)感想
この辺にはさ、何もない様に見えて実は空気が有るわけさ
読了日:5月20日 著者:三上小又
樹木葬 -死者の代弁者- (ガガガ文庫)樹木葬 -死者の代弁者- (ガガガ文庫)感想
大人になった人殺しと子育てのはなし。口をきけない死者に対する軽蔑心と僅かに残った罪の意識が交錯する。この世はムカつくことばかりだと繰り返しながらぐるぐる同じ場所をノタウチまわる光景や、自意識の篭もり具合が(社会に出たとしても)思春期や罪を死ぬまで記憶として背負わなければならない、人間の悲劇を表しているようで興味深い。ここまで純粋に高二病をきちんと処理した作品はいままでなかったのではないだろうか。
読了日:5月19日 著者:江波光則
密葬 -わたしを離さないで- (ガガガ文庫)密葬 -わたしを離さないで- (ガガガ文庫)感想
計算高い恐喝屑と計算高いメンヘラを寝取られた人殺しが引用集を片手に殴り合う。物語の展開自体は、パニッシュメントの間宮先生の登場によりバトル小説と単純化してしまったが、本から得られる精神の安定や自己満足的な内罰は読書と同じ等々、 (特に本読みや物書きの)自意識をちくちくと刺すような心理描写は前作よりも深く鋭い。また、これほどディケンズの名を爽快に扱った作品はないだろう。
読了日:5月19日 著者:江波光則
やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。9 (ガガガ文庫)やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。9 (ガガガ文庫)感想
思春期のトラウマ(高二病成分含)を奉仕部という名のゆるふわ心理カウンセリングで治療しハリネズミのジレンマに気づくおはなし。キーワードは「本物」。
読了日:5月15日 著者:渡航
ストレンジボイス (ガガガ文庫)ストレンジボイス (ガガガ文庫)感想
ジェームス先生最後の授業。対人恐怖症に犯され嘔吐する少女が、片腕を喪失するほどに痛めつけられた男の子の悪意に共感し、趣旨返しに自殺を図った男の子の勇気に乾杯し、ついにはいじめっ子の態度も人間の一側面と諦めてしまう。優しさや現実に取り入る術を教えるような人間は一人も存在せず、悪意が人間を動かしているといわんばかりに、いじめっ子といじめられっ子が殴り合う姿は暴力的だが、文体や心理に通っている諦観は魅力的だ。
読了日:5月14日 著者:江波光則
やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。8 (ガガガ文庫)やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。8 (ガガガ文庫)感想
六巻の学祭の自己犠牲(自己満足)、七巻の恋愛沙汰の自己満足、そしてなにより一巻より延々繰り返されてきた「ぼっちさいきょう」が裏返されるのではないかと思ったら、半分ほど開き直るところでおわった。物語の方は八幡の精神が破局を迎える前に、一色をクッション代わりに挿入して八幡に味方するように展開させている。安易にコロンバインへと向かわせたり、教師や友人の説教といったショック療法的な方法をとらすことなく自己開示を目指しているあたりに著者の優しさと技巧の高さをうかがわせる一冊だった。
読了日:5月14日 著者:渡航
やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。〈7〉 (ガガガ文庫)やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。〈7〉 (ガガガ文庫)感想
八幡の的確な分析と他人の友人関係をある程度操作できる手腕と過去のいじめ虐待のトラウマがいい感じに混ざり合って自己犠牲(自分の道徳に忠実なだけなので、どちらかといえば自己満足か)を形成していて、楽しかった。
読了日:5月13日 著者:渡航
鳥葬 -まだ人間じゃない- (ガガガ文庫)鳥葬 -まだ人間じゃない- (ガガガ文庫)感想
幼児期に犯した罰なき罪の処理方法。読書に逃げ道を見出し罪を整理する主人公、罪悪感と目の前の現実のバランスの取り方を覚え優等生面するヒロイン、主人公と取引をして暴走した友達、はっちゃけたその他二人組がスタンド・バイ・ミー的なノスタルジーと援交全盛期だった90年代に高校生が抱えていた闇をちらつかせていて面白い。主人公の罪の意識やそれと結びついた文学観は興味深いのだが、その他人物との関係が文壇的で、どうも江波作品にしてはキレがないように思う。三部作のひとつなので、狙ってのことなのだろうか。
読了日:5月13日 著者:江波光則
ゆるゆり (9) (IDコミックス 百合姫コミックス)ゆるゆり (9) (IDコミックス 百合姫コミックス)感想
(dog cookie)わんわんわんわんわんわんわんわん!!
読了日:5月9日 著者:なもり
ペイルライダー (ガガガ文庫)ペイルライダー (ガガガ文庫)感想
虐待の中で操心術を身につけたさすらいの転校生と高二病女が、学園版隣組を破壊するために立ち上がる。傷だらけの脂ぎった肉体と孤独であることに存在意義を見出していた男が、同族を発見し共闘することで心変わりし、それが逆手にとられ……というラノベらしからぬ物語だが、転校による人間関係のリセットや隣組式推薦枠といった映画風の設定により、単に高二病作品としては片付けることのできない妙な現実感を獲得している。題名もイーストウッドのあれを意識してるんだろうけど、ジャンルの終末感溢れんばかり作風はペキンパーっぽい。
読了日:5月7日 著者:江波光則
まほろばきっさ 1 (バンブーコミックス)まほろばきっさ 1 (バンブーコミックス)感想
きっさとか真面目そうなタイトルだったから、まさか良心に反して職業ものを書いてしまったのではないかと心配したけど、杞憂だった。
読了日:5月7日 著者:tugeneko
やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。〈6〉 (ガガガ文庫)やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。〈6〉 (ガガガ文庫)感想
地獄の高二病祭。マニュアル化されず(あるいは雪ノ下によってぶち壊された)、指導員も存在しない無法地帯でヒロインは実行委員長としてコミュ障を発症しながらも機械的に活躍し、八幡はカースト最底辺を学祭運営に回した連中に対する殺意を解き放つ。役目を果たせなかった相模への一言が痛烈。
読了日:5月7日 著者:渡航
やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。5 (ガガガ文庫)やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。5 (ガガガ文庫)感想
デート中のコミュ障的な内面描写(p.178)は意外だった。内容も前巻より濃い目だが、記述しようとしている内容にあわせて語彙量や分析、会話が多くなっているため、四巻までの閉塞感が欠けている。ガチガチな高二病が好きだった自分としては少し残念。あと、コミュ障を自己開示によって乗り越えようとしているあたりが岩波ジュニアっぽかった。
読了日:5月5日 著者:渡航
罪と罰〈1〉 (光文社古典新訳文庫)罪と罰〈1〉 (光文社古典新訳文庫)感想
1866年の婆殺し。金に困っての高利貸し殺しというありきたりな筋だが、精密な内面描写が悪漢ものとは別次元のものへと押し上げている。自己完結的な正義感、行為の瞬間の感覚、事後の放心状態で見た無機質な死体、溢れてくる強迫観念と後悔等々、客観視点を排除した流れるような意識の描き方、余談とも思える母と妹に対する病的な態度も誇大化した自意識の有り様のひとつとして、また主人公の殺人動機を生み出した心理的要因としても読めるようになっており、すべてが巧妙。1pの文字数が少ないため少し読みにくかったが面白か
読了日:5月5日 著者:フョードル・ミハイロヴィチドストエフスキー

読書メーター

 

5月の鑑賞メーター
観たビデオの数:25本
観た鑑賞時間:2853分

おくりびと [DVD]おくりびと [DVD]
お葬式のその後。生前の化粧と死に化粧の比較、別解釈の化粧イメージを持った遺族同士の対立等々、描かれ方はメイクリストと同じなのが面白い。
鑑賞日:05月31日 監督:滝田洋二郎
伊丹十三DVDコレクション お葬式伊丹十三DVDコレクション お葬式
大病人のその後。死とその後の葬式につきまとう物語的な悲劇性を日常感を確保することで排除。はじめての葬式に戸惑いつつもVHSを参考に事務的に遺体の引き取りから葬式までをこなしていく山崎努宮本信子、兄弟全てを亡くし慣れきってしまった大滝秀治が自信満々でボケを連発し、部屋の隅ではそれぞれの子供たちが駆け回る。儀式を題材とするなら排除されて然るべき要素が自然主義的な照明のもとで当然のように演じられることで、喜劇的な雰囲気を醸し出しているのが面白い。
鑑賞日:05月31日 監督:伊丹十三
大病人 [DVD]大病人 [DVD]
三國連太郎最後の一年、色情狂の映画監督が胃癌に命を落とす。冒頭の強引なベッドインから吐血を隠そうと歪んだ笑顔で対応し、余命宣告を受けて手の震えが止まらなくなり、衰弱し車椅子に頼らざるおえなくなる三國の演技が津川その他の役者の演技すべてを飲み込んでいる。半世紀に渡る活動で手に入れた、彼の強さと弱さをすべて過ぎ込んだ傑作医療映画。
鑑賞日:05月31日 監督:伊丹十三
生きる [DVD]生きる [DVD]
志村喬最後の五ヶ月。志村の焦りと放心の入り混じったような演技もさることながら、どんどんと内側に篭っていく公務員の内面を繁華街のネオンやストリップと主人公の心理の落差を利用して表現しているのが印象深い。誕生日を祝う女学生とイチャつくカップルの間に挟まれ、胃がんを告白するシチュエーションの何と残酷なことか。具体的な仕事内容をお通夜から遡る推理小説的な手法、志村を酒の勢いでたたえつ、明日には事務作業へと戻っていく同僚たちも良かった。
鑑賞日:05月31日 監督:黒澤明
ミザリー(特別編) [DVD]ミザリー(特別編) [DVD]
(90)米製腐女子は豚にヒロインの名前をつけて破顔一笑、緊張が高まればスープ皿であろうが尿瓶であろうが振り回し、怒り出したら男の足を叩き折るまで止まらない。ただし、キャラクターに対する愛着は作家の意思をも超えると信じ、原稿を焼き捨てるアニーは日本にもいる。
鑑賞日:05月27日 監督:ロブ・ライナー
何がジェーンに起ったか? [DVD]何がジェーンに起ったか? [DVD]
(62)ハリウッドのレールから放り出されたベティ・デイヴィスジョーン・クロフォードの老後。幼少期の栄光を取り戻すためにダミ声で歌い踊りロリータを着用し、老いを隠蔽するために厚化粧をしているうちに、食事にオウムやネズミを混入して面白がるまでにも精神が退化していく、そんな光景がスター時代の存在しないベティ・ディビスの願望をそのまま映像化しているようで恐ろしかった。派手目のアクションや台詞が登場する度に効果音から台詞まで潰す勢いでサントラが流れるのは何故か。
鑑賞日:05月27日 監督:ロバート・アルドリッチ
イヴの総て [DVD]イヴの総て [DVD]
(50)ブロードウェイのコネに縋るマーゴの破滅とイヴ成功の物語。哀愁を漂わせ俯き姿勢で役をねだり獲得するアン・バクスター(27)、それにコロッと騙され、役を奪われヒステリックに叫ぶベティ・デイヴィス(42)がハリウッドシステムのレールに乗りながらハリウッドシステムを風刺し、また同時に自らのキャリアをかけて殴り合っているようで面白かった。
鑑賞日:05月27日 監督:ジョセフ・L・マンキウィッツ
千年女優 [DVD]千年女優 [DVD]
(02)邦画引用集
鑑賞日:05月26日 監督:今敏
パーフェクトブルー 【通常版】 [DVD]パーフェクトブルー 【通常版】 [DVD]
(98)自我崩壊。踊ったりドアを開いたりめを覚ましたりといった、ヒロインの動作のみを軸に場所的時間的に違うシーンをつなぎ合わせ、時には巻き戻し解離性を、時に相反する人格同士の闘争を表現しているのが印象深い。パプリカのように枠やマスクを使った時空の通り道や多重人格の共存は想定されず、ただ不安と離人感を煽り続ける様はグロテスクで夢のようだった。
鑑賞日:05月26日 監督:今敏
ゴジラ (1954年) ~GOZILLA~ (Blu-ray) (PS3再生・日本語音声可) (北米版)ゴジラ (1954年) ~GOZILLA~ (Blu-ray) (PS3再生・日本語音声可) (北米版)
黒の微妙なコントラストが表現できていなかったり、細かい情景が白く潰れてしまうことから評価の割ることの多い海外リマスターだが、これは当たり。VHS、東宝版DVDで見えなかった旋回するセイバーやゴジラから間一髪逃れて路地へ走り込む人がはっきりと見えるようになった。また、七人の侍のように情景を強調するシーンが存在しないこともあって違和感もそれほどない。東宝版は黒をしっかりとコントロールしているので、また別の味わいがあるそうなので機会があれば見てみたい。
鑑賞日:05月25日 監督:本多猪四郎,円谷英二 (特撮)
ゴジラ(1984年度作品) 【60周年記念版】 [DVD]ゴジラ(1984年度作品) 【60周年記念版】 [DVD]
バブル前夜(84)の再襲撃。関東大震災東京大空襲ゴジラ襲撃から復興を遂げ、漁村の変わりに原発、EF58の代わりに0系が走り高層ビルが立ち並び、東西冷戦の真っ只中にある日本が放射能を動力とした怪物に破壊される。初代を意識した凶悪な造形、動きのないバストショット重視のカメラワーク、東西冷戦の真っ只中にある島国を核の洗礼を受けたゴジラが襲撃するというプロット等々、戦後に蓄積されてきた東宝特撮、風刺技術が投入されており、高度成長期の楽観的な雰囲気を吹き飛ばすつくりになっている。小林桂樹の投入により巨視的な視点
鑑賞日:05月25日 監督:橋本幸治
GODZILLA ゴジラ[2014] Blu-ray2枚組GODZILLA ゴジラ[2014] Blu-ray2枚組
(14)災害風刺怪獣映画。逃げ惑う群衆(+渋滞化しすし詰め状態になった車)、炎に流される旅客機、津波に流されるリゾート地等々の本多猪四郎版に東北やスマトラ島の災害が加わったような映像が詰め込まれている。フルショットで敵と戦う図がないため怪獣としては物足りないものもあるが、エメリッヒ版のようなトカゲ感もパシフィックリムのような大仰な手ブレ演出もなく、のしのし重低音を響かせ歩いてくれるので愚鈍で迫力がある。これで直接ビキニやスマイリー島に言及してくれたら文句はなかったのだが、高望みだろうか。
鑑賞日:05月21日 監督:ギャレス・エドワーズ
GODZILLA 【60周年記念版】 [DVD]GODZILLA 【60周年記念版】 [DVD]
(98)フランス人によって生まれた怪獣をフランス人の手でアメリカ人のために退治する映画。怪獣映画としては多角的な視野をもった作品で、海中に引きずり込まれるトロール船、吊り橋を破壊しながら現れる頭部等々の比較表現、ヘリ/潜水艦/車との追跡劇等々のクリーチャーの仕草は興味深い。オリジナルとの比較やフランスへの責任転嫁、釣り餌作戦や回避行動後のタワー破壊の段取りの類似を考えなければ、まったく問題のない作品。
鑑賞日:05月20日 監督:ローランド・エメリッヒ
コーラスライン [DVD]コーラスライン [DVD]
(85)ブロードウェイのコーラスオーディション。舞台的な台詞、装置をままに使った作品だが、序盤の敗者たちがつぎつぎと外され、時にダンス中止を指示される場面やコーラス希望と元メインだったキャシーの身振り手振りが集団から外れる瞬間をしっかり大写しで捉え、コーラスの本質を表すことで、ぎりぎり映画としての価値を保持している。
鑑賞日:05月18日 監督:リチャード・アッテンボロー
ブラック・スワン [Blu-ray]ブラック・スワン [Blu-ray]
(10)自傷癖のある女の子が、セックスドラッグバレエを通して女として成長していく物語。バレリーナを取り巻く環境を登場人物に仮託(母=処女性、振付師とリリー=性、ベス=キャリア)しオデットと対応させ、それらをホラー的(水面や鏡に映った自像の歪み、ドラッグによって歪んだレズ記憶)に表現し、それらの打破を処女性の破壊とオディールの完成を重ね合わせることで、実写には珍しい主観的な視点を獲得している作品だった。
鑑賞日:05月18日 監督:ダーレン・アロノフスキー
アメリ [Blu-ray]アメリ [Blu-ray]
(01)アメリ・プーランの素晴らしい運命。家に囲われた女の子の恋が成熟するまでを描いただけの映画だが、ブリュレのカラメルを叩き割ったり豆袋に手をつっこんだり、金魚屋家具と対話するといった主観的、妄想的要素が(あざとい)パリの町並みや色彩と絡み合って混沌。誰もが体験するであろう、世界そのものを認識できた、物事の尺度を持っていなかった幼児期を思い出させる作品だった。
鑑賞日:05月17日 監督:ジャン=ピエール・ジュネ
17歳のカルテ コレクターズ・エディション [DVD]17歳のカルテ コレクターズ・エディション [DVD]
(99)精神病棟を舞台に傷を舐めあう少女たちの物語。同じ60年代を舞台にしたカッコーとは違い、少女たちの医師に対する反抗、脱走、スった向精神薬をつかった経済活動、危険を冒したあとに芽生える友情といった、思春期模様が主題。プライベートにも闇を背負ったウィノナ・ライダーとアンジェリーナジョリーのキメ・ダウナー顔、ドアの開け閉めカットを利用した過去開示、アンジェラ・ベティスの奇声等々、ゴス的な雰囲気がある。ただし、病棟内での自殺未遂や自傷行為については直接的な描写を避け、また
鑑賞日:05月17日 監督:ジェームズ・マンゴールド
エクソシスト ディレクターズカット版 & オリジナル劇場版(2枚組) [Blu-ray]エクソシスト ディレクターズカット版 & オリジナル劇場版(2枚組) [Blu-ray]
(73)精神医学の敗北と悪魔祓い。首をくるくると回転させ、ブリッジで階段を駆け上る女の子のホラーチックな悪ふざけが、脳断層撮影のために用いられるレントゲンやその他医療機器、斜めにかけられた工事用の鉄橋、複雑に編まれた木製の廊下等々の無機質で日常感のないガジェットや情景と一体化することで、異様な説得力を獲得している。サブリミナルといった技巧も使うことで、通常のフィルム編集では得ることのできない、心理学的な面白みもあった。
鑑賞日:05月13日 監督:ウィリアム・フリードキン
エスター [DVD]エスター [DVD]
(09)とある孤児と家庭崩壊。軽やかに礼儀正しく振る舞い、聖書片手にお絵描きをしながら、夫婦の過去にそっと囁きかけ、感づいた子供たちに殺意を向ける、微妙に引きつった表情で魅せるイザベル・ファーマンが兎に角素晴らしい。オーメンデミアン等々、子供が家庭崩壊の引き金を意図する物語はいくつも存在するが、これほど演技と物語の方向が合致した作品は他に存在しないだろう。エスターの正体がファーマンの真っ白な東欧肌と演奏、絵描きの才能等々の特徴を生かせておらず、一発ネタのホラーと化していたのは不思議だったが。
鑑賞日:05月13日 監督:ジャウム・コレット=セラ
キャリー [DVD]キャリー [DVD]
(76)豚の血とスプリー・キラー、キリスト教右派の母親によって抑圧され、学校では生理知らずを理由にいじめられ、戯れに持ち上げられ、精神的に枯れ果てた少女がダンスパーティーで爆発する。最後の晩餐の壁紙前の食事、子どものおもちゃのようなキリスト像、マルチアングルから見た暴れまわる放水ノズル、ローアングルやフレーム化した支柱等々、あざといまでに不安定な小道具やレイアウトがすてき。
鑑賞日:05月10日 監督:ブライアン・デ・パルマ
MAY メイ APS-30[DVD]MAY メイ APS-30[DVD]
(02)サイコレズの人形づくり。精神的な脆さをゴスやボンテージといった衣装的要素やキャリーのように生理現象といった記号に依存せず、神経過敏からくる人体の部分(手、太もも、唇)に対する異様な執着と破壊欲で表しているのが印象的。後半の復讐劇にも部位に対する愛着がきちんと映像的に接続されていて面白かった。
鑑賞日:05月10日 監督:ラッキー・マッキー
時計じかけのオレンジ [Blu-ray]時計じかけのオレンジ [Blu-ray]
71年公開の罪と罰。ロシア語風の英語を話し、雨に唄えばにあわせて老人を殴る蹴る不良アレックスの物語。いつものキューブリックらしくセットは幾何学的に配置され、カメラワークは冷淡だが、そういった無機質性が暴力と見事に溶け合っている。”歌い”殴り“聞く”主人公の行いすべてが裏返り、彼を責め立てる材料となる後半の描写は原作以上のインパクトがあった。視聴覚すべてに訴えかける、混沌と秩序が共存した素晴らしい政治劇だった。狂気から正気、廃人までを演じ分けたマクドウェルに乾杯!!
鑑賞日:05月04日 監督:スタンリー・キューブリック
恐るべき子供たち《IVC BEST SELECTION》 [DVD]恐るべき子供たち《IVC BEST SELECTION》 [DVD]
(50)姉VS男色。いしつぶてのダンジェロスや故ミカエルの部屋をふざけた子供部屋等々、原作を目に見える形にはしてある。ただ、冒頭の雪合戦は遠景的で流血激には程遠く、また原作の重要な要素であるダンジェロスの美貌も姉弟の精神的繋がりや夢といったものが全て”ナレーションにより解説”で済まされており、画に起こす以上のことがなされていない。コクトー自身からの依頼で制作されたとされるが、何か意図あっての実験作だったのだろうか。
鑑賞日:05月04日 監督:ジャン=ピエール・メルヴィル
スタンド・バイ・ミー コレクターズ・エディション [DVD]スタンド・バイ・ミー コレクターズ・エディション [DVD]
(86)カインコンプレックスとアル中の息子とPTSDの息子とデブの友情物語。スラングとタバコと死体探しで悪意を共有し、互の世間離れした親から受けた傷を舐めあうという、およそ日本では考えられない光景が子役らの演技によってノスタルジーへと変換される。子どもの仕草だけは国境を越えるという好例。
鑑賞日:05月03日 監督:ロブ・ライナー
エレファント デラックス版 [DVD]エレファント デラックス版 [DVD]
(03)スクールシューティングを軸に再現された学校生活。スクールカーストの構成員のうちジョック、クイーンとワナビー、フローターを後追い長回しで主観、時間表現的に捉え、学校の退屈な雰囲気と殺意を描いている。各階層を交差的に描くことで、ヒエラルキーを立体的に描いているのが面白い。犯人らの動機をあえて描写しないことで、事件をどこにでも転がっていそうなものとして描いているのが興味深かった。
鑑賞日:05月02日 監督:ガス・ヴァン・サント

鑑賞メーター