2013/06/01-

時間の無駄だから読まないほうがいいよ。

「イギリス社会」入門―日本人に伝えたい本当の英国 (NHK出版新書 354)

 中流生まれのオックスフォード卒、日米で特派員として活躍した経歴を持つイギリス人による英国文化レポート。ユニオンジャックに封じられたアイルランドのセント・パトリック・クロス、労働者の味方を演じるために名門校の服装を隠そうとする政治家、母語である英語の主流をアメリカにとられて傷つく一方で、アメリカ人によって再建されたグローブ座でシェイクスピアを観劇する英国人。大英帝国の亡霊と新たな社会の波の間で揺れ動く姿が印象的だ。欧州大戦初期の頃に戦線地図ならぬ紅茶地図を作製したというエピーソドはイギリスらしい皮肉と愛情の共存を感じさせる。

 単なる自虐混じりのお国自慢かと思えばそうではない。扱っているテーマは階級、王室といったイギリスらしいものからパブで暴れる若者といったどこにでもありそうなものまで幅広い。恥じらいもなくイスラム教徒を差別し、アイルランドを罵倒する人物としてジェレミー・クラークソンの名前も登場する。著者は彼を好ましからぬ人物として紹介しているが、彼が道路の速度制限や環境保全への疑問を口にするとき、英国人は彼に共感しているのだとやんわり肯定している。イギリス人といえば、常に物事を二面的に捉えてブリティッシュジョークをとばすようなひねくれ者として描かれることが多いから、こういう直情的な見方を提供してくれるのは新鮮だしありがたい。それが親近感と文化の隔たりを同時に、生々しく伝えてくれる。

 オーウェルにも似た皮肉のきいた文体が独特で癖になる一冊だった。

 

「イギリス社会」入門―日本人に伝えたい本当の英国 (NHK出版新書 354)

「イギリス社会」入門―日本人に伝えたい本当の英国 (NHK出版新書 354)

 

 p.17,36,51,74,101,115,126,128,198