十一月の読書やら鑑賞やら何やら
今月読んだ本やら映画やらから五選。なお、印象に残った作品を並べているだけで、順位付けではない。
serial experiments lain Blu-ray BOX|RESTORE (初回限定生産)
- 出版社/メーカー: ジェネオン・ユニバーサル
- 発売日: 2010/10/27
- メディア: Blu-ray
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薄暗い蛍光灯に照らされる電柱だらけの市街とか女子生徒が独りトボトボ家に帰る90年台のアングラ的光景が見たくなって見なおしてみたら、実直なサイバーパンクで驚いた。
バニヴァー・ブッシュのメメックスやテッド・ネルソンのザナドゥ計画といったインターネット前史にシューマン共鳴というオカルトチックな要素を組み込んで、現実とワイアードの行き来を可能にするという発想。それは今や日常化されて理念は埋もれてしまった、知識の共有というインターネットの本来あるべき姿を思い出させてくれる。
毎度、冒頭で流れるモスキート音や耳元で呟くような不快な声、タイルを叩くようなペタペタとした音等々の音響関係の演出も良かった。
核戦争による世界の終わりを米戦略会議室を中心に描いた風刺劇。米国民が地球最後の人間となるようセッティングされた様々なガジェットが面白い。米軍将校の権限やCRMM114が誤作動、それらが着実に終末へと足を踏み進めていく様子が何とも滑稽。核爆発(実験映像)にあわせ、のんびりと歌われるヴェラ・リンのWe'll Meet Againは必聴。
上の「博士の異常な愛情」が成熟したあとの世界。こちらは風刺ではないが、終末を前にした人々が絶望のあまり自殺していく様子は悲しい。「博士の異常な愛情」でも「良心的な人々は悲観のあまり自分から死を望むのではないか」というような台詞があったが、そんな楽観論をモデルにしたような作品。
かっちりとしたスーツを着こなし、防弾傘で銃弾の雨を弾き、畳んでライフル化させた傘で敵を吹き飛ばす等々の秘密兵器を駆使して世界征服を目論む組織を叩き潰す、というコネリー時代のボンドロマンと電子機器を利用した環境テロリストを瞬間接着剤でひっつけたような作品。
スマホによってスーパーリンク化した社会をSIMに仕組んだ毒電波を受話口から解き放つことによって破壊するとか、産業革命の国で起こった暴動にハートマスターが突っ込んだり、米国人が教会で銃を振り回す、”殺戮風景”がきちんと歴史を踏まえたうえで展開されているのが嬉しかった。
カジノ・ロワイヤル、慰めの報酬の反動でもあるのだけれど、悲壮感を漂わせながら、いつものボンド映画の定番を押さえているのが良い。大英帝国のために銃をとるM、やけ酒を煽るダメボンドに「壊さずに返してください」と忠告しつつ手渡すQ、一度ボンドを殺してなお笑顔で接するマネーペニー、シフトレバーに特殊ルーフボタンを仕込んだアストンマーチン(車自体はカジノから登場している)小学生の頃からボンドを見てきて、ここまで007にドラマを背負わせた作品を見たことはない。