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印象 2013/06/01-

オールタイムベスト http://efnran.hateblo.jp/entry/2016/01/01/000000

華氏451度 (ハヤカワ文庫SF) レイブラッドベリ

 ほとんどすべての文学が禁書とされた世界で、焚書係として働いた男が読書家に転向するまでの物語。

 全体主義を題材とした作品ながら、1984のように民衆を締めあげることなく、あくまで民衆への配慮の結果として管理者階化している。喫煙者がタバコと肺がんの関係を知れば鬱になるだろうから、その手の医療書は禁止、人種差別的なプロパガンダなんてもってのほか。そんな不幸せになるようなものよりも、TVのように頭を使う隙を与えないような”楽しいもの”に浸っていた方が”幸せ”になることができる。それに、本は様々な主張を提供するが、それは頭のなかで矛盾を形成し、ただ無駄に悩まさせるだけで、良いことなんかひとつもない。
 主人公はそんな優しさと合理に満ち溢れた社会を目の前にしても、なお読書にすがるのだが、その最終手段が暗記というのも面白い。悩む人間は記憶した当人のみで回し読みされることもない。いかにも体制側にも配慮した、いかにもブラッドベリらしい詩的な解決方法だと思う(印刷と普及というグーテンベルク以降の機能を果たせなくなる欠点もあるが)  読書体験には善悪両方の側面があり、それに振り回されることこそが醍醐味だということを再認識させられる本だった。

 

 

華氏451度 ハヤカワ文庫SF

華氏451度 ハヤカワ文庫SF